さて、法輪功サイトの話に戻ろう。いろんなコーナーがあったのだが、読んだ限りではやっぱり「体操愛好家団体」よりは「オカルト団体」に近いと思わざるを得なかった。だいたい「教祖」の李洪志氏の肖像の扱い方は…日本人は明らかに連想するものがありますよ(ついでにいえば「卍」マークをナチスと連想させる欧米人も多いだろうな。向きが逆だけど)。
それと面白かったのが掲載されていた李洪志氏の「気功は先史文明」という文章。「一番重要な著作?『転法輪』より」とあり、この「教祖」が何を考えているかのキモと言えるところと思われる。一読して「これって『てこ歴』じゃんか!」と膝を打ってしまった。後日そっちで取り上げるかもしれないが、こっちでそのいくつか面白い点を指摘しておこう(注:当然ながら日本語訳部分から引用。英語版はなぜか繋がらなかった)。
タイトルから分かるように、李洪志氏は「気功は先史文明から続いているもの」と主張している。この説明がもう科学知識を吹っ飛ばしたオカルトネタのオンパレード!これを信じるのは勝手だが、やっぱ「宗教団体」と見られますよ、こんなこと言ってたら。
「ダーウィンの進化論によれば、人類は水生植物から水生動物になり、そして陸地に上陸し、樹の上に登り、また地上に降りて猿人になり、最後に文化と思想を持つ現代人類に進化したと言いますが、それによって推計すれば、人類の文明が真に現われてから一万年にもなっていません」
…水生植物から水生動物になったってのが理解不能だが(起源が同じというんならわかるんだが)…「進化論」でそんな話があったかな?もっとも李氏はあとで書くように「進化論」なんか信じちゃいない。「一万年」よりもずっと前、なんと「億」単位の昔から「文明」があったと主張している!
「多くの海底で、巨大な古代建築物が発見されました。これらの建築の彫刻は非常に精巧で美しいものですが、われわれの今の人類の文化遺産ではありません。だとすると、海底に沈む前に建てられたものに違いありません。では、数千万年前に誰がこのような文明を創造したのでしょうか?」
…この人、数千万年前から大地は現在の形で変動しなかったと勝手に解釈しているのだ。大陸移動だけでなく陸地の浮き沈みなんてしょっちゅう起こってることなんだが…「海底遺跡」なんて案外新しい時代のものもあるんだけどね。
「アメリカの科学者が見つけた三葉虫の化石に人の足跡があり、靴を履いた足跡がはっきりと残っています。これは歴史学者をからかっているのではありませんか? ダーウィンの進化論に従えば、二億六千万年前に人類がいるはずがないのではありませんか?」
…この手の話はオカルト業界ではおなじみ。「恐竜の足跡と人間の足跡が重なった遺物」といった怪しげなアイテムがいっぱいある。いずれもインチキがばれているはずだが。
「ペルー国立大学博物館に一つの石があり、その石に人間の姿が彫刻されています。鑑定によれば、この人間の姿は三万年前に彫刻されたものです。しかし、その人間は服を着て、帽子をかぶり、靴を履いていて、おまけに望遠鏡まで手に持って空を観測しているのです」
…「三万年前」って鑑定そのものにも怪しさを感じるが、ぜひ現物を見てみたいものだ(いや、案外見たことがあるやつかも)。この手のアイテムもよくあるんだよなぁ。日本の土偶も「宇宙服」とか言われてるもんね。なんだか「神々の指紋」の世界である(あれもかなりのインチキ本です、批判本も参照のこと)。ひょっとすると「教祖」はあれにかぶれたのかもしれないな。
「アフリカのガボン共和国ではウランという鉱石が発見されましたが、国が立ち後れていて、自国ではウランの精錬ができないため、先進国へ輸出していました。一九七二年にフランスのある会社がそれを輸入し、科学実験をしたところ、そのウラン鉱石はすでに精錬されて使用されたものだと判明しました。不思議に思った会社側は現地に技術者を派遣して調査し、その他に多くの国々の科学者も現地調査に行きましたが、最後に、そのウラン鉱石採掘場は大型の原子炉だったこと、構造が非常に合理的で、われわれ現代の人類も造れないものだということが分かりました。では、いつ建てられたのでしょうか? 二十億年前で、五十万年も運転されていたというのです」
…この話はいったい何なんだ(^^;)。最後の「二十億年前で、五十万年も運転されていた」という文も素晴らしい。ケタにもの凄い落差が(笑)。だいたいどうやってそんなこと調べられるんだ!?
こんな調子で李氏は超古代文明の存在を力説する。「勇気ある外国の多くの科学者は、すでにこれは先史文化で、われわれ人類の今回の文明より前の文明であることを公に認めています。すなわち、今回の文明の前にさらに文明時期が存在しており、しかも一回だけではありませんでした」と言い出すのだ。何でも人類の文明は何度も発展しては壊滅し、また一から作り直すということを繰り返してるんだそうだ(なんか「火の鳥」未来編みたい…)。「ある日、わたしが詳しく調べてみたところ、人類は八十一回も完全に壊滅された状態に陥り、ただわずかの人だけが生き残り、わずかの先史文化が残され、次の時期に入って、原始生活を送り始めたのです」という部分にも唖然。「八十一回」ってどうやって調べたんだ!?それも「ある日」だけで…
とにかくこんな話をズラズラと並べた上で、李氏は「気功ももわれわれ今日の人類が発明したものではなく、悠久の年月を経て伝わってきたもので、先史文化の一つである」と主張する。この辺の説明には僕が聞いたこともないお釈迦さんのコメントが出てくるのだが省略。これだけの事を言って置いて他の気功を「インチキ」だの「偽物」呼ばわりするのだが、これじゃどっちもどっちという気もしてくる。ついでながら気功だけでなく「太極、河図、洛書、周易、八卦」なんかも先史時代からあったんだそうだ…。
とてもじゃないが信じがたいヨタ話としか思えないのだが、そういう批判についてもちゃんと防御線が張ってあった。李氏のお言葉によると「今日われわれは常人の立場に立って、それをどんなに研究し理解しようと思っても、究明できません。常人という次元、立場、思想境地からでは、本当のことを理解できるはずがありません」だそうだから、「常識」からツッコミ入れても無駄なようである。
…以上、「てこ歴」の出張版でした(笑)。他にもいろいろと爆笑ネタがあるのだが、それは後日「てこ歴」本体の方ででも。
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