前回に引き続き、中国の三国時代を特集します。名立たる英雄を輩出する時代であり、有名な美女や才女も登場する時代です。貂蝉や小喬、蔡文姫など知恵と美貌を兼ね備えた女性たちもまたこの偉大な時代を彩りました。今回の中国メロディーは三国時代の女性にスポットをあててみました。
閉月の美女?貂蝉
貂蝉(ちょうせん)は、「三国演義」の舞台に登場する女性群像の中でも、最もまばゆい女性像です。彼女は美貌と聡明さで、国を救う重荷を背負い三国時代一の美女と称えらました。そのあまりの美しさに、月が恥じて雲に隠れてしまったことから、「閉月の美人」と言われています。
後漢王朝の実権は、宮廷闘争の勝者、董卓によって握られ、董卓は専横の限りを尽くし、暴政を敷きます。王允という忠臣が義理の娘、貂蝉と共に董卓誅殺の美女連環の計を謀ります。貂蝉の、その美貌と機転が際立ちます。董卓と董卓の養子、呂布の2人と巧妙に交際し、2人を仲違いさせ、呂布の力を借り、董卓を誅殺します。
才色兼備の女流詩人?蔡文姫
三国時代で最も美しく聡明な女性を貂蝉だとすれば、最も才気溢れる女性は蔡文姫でしょう。ただ、数奇な運命と波瀾の人生は、後世の人々に、扼腕してため息をつかせます。
蔡文姫の父親は三国時代の有名な文学者であり後漢の丞相、曹操の恩師でもあります。蔡文姫は、その娘として幼い頃から音律に精通し、博学で才能に長け、才色兼備の女流詩人として評価されています。195年、戦乱の中、18歳の蔡文姫は匈奴の王子「劉豹」に捕われ、その妻となって、2人の子を産みました。12年後、中原を統一した曹操は恩師の娘が異郷に身を寄せることを憐れみ、大量の贈り物?金と玉宝で蔡文姫の帰還をかけあいました。ただ、実の子を匈奴に残して。故郷を戻った蔡文姫はその帰郷の喜びと子供と離別する悲しみを「胡笳十八拍」と言う有名な長歌を作りました。
絶世美女?小喬
三国時代の名戦、赤壁の戦いは魏、蜀、呉の三国の英雄たちの才能と魅力にあふれた舞台です。呉の孫権側で最も注目を集める英雄はもちろん、青年将軍?周瑜です。周瑜は若く、立派な風采を整えており、美周郎と呼ばれました。
また、周瑜の妻、小喬は呉の絶世の美女として有名でした。周瑜と小喬は非常に仲睦まじい夫婦でその夫婦仲睦まじい様子が千古の美談として伝えられました。
男勝りな孫尚香
覇権を競う男の世界の中男のように勇ましい女性がいました。孫権の妹、孫尚香です。彼女の勇気と愛に満ちた人生は三国時代の舞台に優しい色彩を添えました。
孫尚香は呉の君主、孫権の妹。兄に似て気丈で、幼い頃から武芸を好み、薙刀を得意としました。?赤壁の戦い?の後、孫尚香は劉備の妻となりました。勝気で、劉備と呉を脱出した際、帰国を妨害する呉将を退けました。男にも引けを取らない英雄ぶりが現れています。その後、孫尚香は兄、孫権から母親が危篤である偽りの報を受け、呉に戻りましたが、夫の劉備が戦いで死んだと伝えられ、絶望して長江へ身を投げました。愛に忠節を貫く烈女は、三国舞台で最もため息をつかせる悲劇のヒロインとなりました。
番組の中でお送りした曲
1曲目~貂蝉拝月(貂蝉は月を拝む)
曲は中国地方劇?越劇「貂蝉拝月(貂蝉は月を拝む)」の一部です。貂蝉は月を拝んで、董卓の悪政に苦しむ国の状況を打開しようとする王允のために祈るシーンです
歌詞
線香を点ずる月に祈る
幼いころ両親を亡くした私
義父は肉親のように
私の世話をしてくれる
最近、義父が眉をぎゅっと寄せ
董卓の悪政で悩んでいる
義父に力を貸したい
娘として焦りながら
どうすることもできない
2曲目~胡笳十八拍(こかじゅうはっぱく)
「胡笳十八拍」は蔡文姫が匈奴に捕らわれてその王に嫁し,12年のち帰還しましたが,その痛切な体験をみずから18章に仕立てて詠んだという長歌です。曲は葦笛の一種、胡笳と琴の調べにのせてうたったもので、蔡文姫の生涯をいきいきと描きました。
3曲目~赤壁の賦
では、次にお送りするのは宋の詩人の蘇軾が書いた名作「赤壁の賦」をモチーフにした同じタイトルの歌です。
周瑜が曹操を破った「赤壁の戦い」や周瑜の小喬を娶ったころの凛々しい姿に想いを馳せながら、今はその姿もなく、人の世は夢のようであると歌います。
歌詞
想いやれば、周瑜はその年、
美しい小喬を迎えたばかりで、
英雄の姿いさましく、
羽うちわと綸子の頭巾(をつけた諸葛孔明との)
談笑のしばしの間に、強敵は灰けむりとなって、ついえ去った
ああ、故里へ魂ははせる
こころある人は、笑うであろう、
私が早くも白髪頭になったと
だが、人の世はまことに夢
まずはこの一本の酒を大江の月にささげるとしよう
4曲目~子夜四時歌(四季の恋歌)
曲は晋の時代の恋歌で、もともと晋の女性、子夜が創作したもので、恋人への思いを綴りました。1994年に放映されたテレビドラマ「三国演義」では劉備と孫尚香が結婚する幸せなシーンの挿入歌として使われ、今も多くの人々に愛されています。
歌詞
鮮やかで美しい春の花
悲しみに満ちた鳥の鳴き声
優しい春風が人をうっとりさせ
私の衣装もそよそよとなびく