成都ジャイアント?パンダ繁殖研究基地にいる子パンダ
自然回帰のために
早朝、成都ジャイアント?パンダ繁殖研究基地の飼育員?李麗さん(27)はいつものように、パンダたちのために朝ごはんを準備し、赤ちゃんを細かく検査し、パンダが毎日活動する場所をきれいに掃除していた。この、小柄な成都美人は、すでにここで4年働いており、幼稚園の先生のようにパンダたちの面倒を見ている。
李さんにとって、パンダは世界で最も「萌」(かわいい)な動物だ。パンダたちの毎日の生活は、何かを食べているのでなければ寝ている。仰向けでなければうつぶせで、丸まっていることもあり、時には恥ずかしそうに手で目を覆っていることもある。「表面的にはかわいいのですが、パンダの爪はとても鋭く、かむ力も熊に劣りません。ですから、大事なのはパンダを自分に慣れ親しませること、自分を信頼させることで、給餌や掃除、ペアリングから病気治療や予防措置まで、全面的に気持ちを通わせる必要があります。一度信頼関係を築けば、パンダはとても人懐っこく、会うと鼻を触れてきますし、去ろうとすると足を抱えて離しません。時には甘えて転げまわったりします。基地のパンダがほかの場所に借りて行かれる時には、よく担当の飼育員も一緒に付いて行きます。子どもが家を出る時に安心できない親のようです」と、李さん。
飼育員の李麗さんにじゃれつく子パンダ
親が子どもの独立を願うのと同じように、成都基地もジャイアント?パンダが自然の中で生存、繁殖することを望んでいる。1987年の設立以来、成都基地のパンダ個体数は6匹から151匹まで増えたが、個体群の安定保持のためには、ただ保護し囲って育てるだけでは十分でない。一つの種としての特長を保持するためには、必ず本来の生態環境の中に戻さなければならない。
パンダを本来の環境の中に戻すため、基地では絶えず各種の試みを行っている。例えば給餌にしても、飼育員が直接与えることをせず、竹を挿しておき、パンダが自ら探すようにしている。一部の子パンダは生後母親と切り離すことなく、母親について木登りやタケノコのむき方、防御など生き残る技を学ばせている。また、近親交配による個体群の優性劣化を防ぐため、成都基地では各地のパンダ保護機関と互いに融通し合い、遺伝子や血縁上の問題を考慮してペアリングを行っている。こうした全ての努力は、パンダたちがいずれあの「パンダ村」の村人と同じように、大自然の中で自由自在に暮らせるようになるためなのだ。
木造の橋の上で戯れる三兄弟
国境を越えて
2012年2月、ドキュメンタリー映画『51 世界で一番小さく生まれたパンダ』が日本で公開された。これは成都ジャイアント?パンダ繁殖研究基地で生まれた超早産のパンダ「51(ウーイー)」の物語だ。この、生まれた時に51グラムしかなかったパンダの赤ちゃんは、飼育員らが懸命に世話をし、母親が頑強なパンダに育てた。この作品が仙台で上映された際には、映画の中のパンダ母子の愛情が、東日本大震災の被害地域に暮らす家族を大いに感動させた。
1972年、ジャイアント?パンダの康康と蘭蘭が東京の上野動物園にやって来て、日本に一大パンダブームを巻き起こした。当時は、数時間待って数十秒パンダが見られるだけだったが、それでも毎日数万人が上野動物園に行列を作った。94年、成都ジャイアント?パンダ繁殖研究基地は日本の和歌山県南紀白浜アドベンチャーワールドとの間で、初のジャイアント?パンダ国際協力繁殖計画をスタートさせた。成都基地が蓄積した成功経験の上で進められているこの計画で、パンダ家族は人々の期待を裏切らず、絶えず日本で子孫を増やしており、日本のパンダファンを喜ばせている。
2000年9月、成都ジャイアント?パンダ繁殖研究基地から来た梅梅がアドベンチャーワールドで3匹目の子どもを産んだ。良浜と名付けられた女の子は12年ぶりに日本国内で誕生したジャイアント?パンダであり、この後6年の間に梅梅は6匹の子どもを産んだ。良浜は成長し、08年に男の子と女の子の双子を産んで、それぞれ永浜と梅浜と名付けられた。梅梅はその後、財団法人日本動物愛護協会から「功労動物」、社団法人日本動物園水族館協会から「功労賞」を贈られている。
南紀白浜へ向かう直前、実験?研究に余念がない蔡志剛さん
取材時、成都基地の研究補助員?蔡志剛さん(34)は、仕事でアドベンチャーワールドに向かう直前だった。彼によると「基地では毎年スタッフを日本に送って彼らがパンダ繁殖を行うのを手助けしており、日本側も学習のためひんぱんにここに人を送って来ています。双方が協力研究で得た成果も非常に多いのです」と話している。中日両国研究スタッフのたゆまぬ努力で、双方は合計で8胎15匹のパンダを誕生させ、12匹を育て上げ、アドベンチャーワールドはすでに中国以外で最大のパンダ人工繁殖個体群を有するまでになっている。
現在では、成都基地のパンダたちの足跡は日本や米国、カナダ、スペイン、フランスなどに広がっている。国際協力が絶えず深まるのに伴い、より多くの科学者が基地を訪れ、技術やスタッフ配置面で国際化水準は日ごとに高まっている。天真爛漫なパンダは成都人の友好を世界に伝えるだけでなく、成都人の野生動物保護にかけるたゆまぬ努力も世界の人に見せているのだ。