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入院と法輪功

2012-02-15 作者:JOHN B.RABITAN

7月のある日、私は食事を作りながら流しの下の棚のわかめを取ろうとした。その日はちょうど、味噌汁を作っていたのである。その時勢いよくしゃがんだ折に、右ひざにガクっという衝撃を覚えた。翌日はそれでもびっこを引きながら出勤した。

……

ちょうどその入院していた時に、法輪功事件が起こった。気功集団法輪功が、違法集団とされたのである。それまでも法輪功は中南海を包囲したりと、何かとお騒がせな団体ではあった。当局もついにしびれを切らせたようだ。入院中にNHKも見られずに仕方がないから見ていた「箱」の中は、朝から晩までどのチャンネルをひねっても法輪功一色となった。あの日本での、九五年のオウム報道の大騒ぎと全く同じである。日本ではオウムの記者会見を流すなど一応オウム側の主張も報道していたが、中国では法輪功の被害者にばかりスポットを当てていた。その前の年の長江の大洪水の時も報道はすごかったが、その時の比ではない。長江大洪水の時は私の職場でもその話で持ちきりで、皆かなり義援金を送っていたが、台湾大地震ときは「あ、そう?」という感じだった。普段は「台湾は中国の不可分の領土の一部」とか言っているくせに、こういう時は対岸の火事でしかないようだった。

法輪功といえば、私も職場で以前に共産党の老幹部でもあるスタッフの一人から、法輪功を解説する日本語のチラシをもらった。「よかったら読んでください」だけでそれ以上は何もなかったが、どう見ても宗教の勧誘のチラシのようである。胡散臭くもあったが、なぜ共産党の幹部がこんなものをと不思議でならなかった。あの人は法輪功の信者だったのであろうか。今でも彼は何食わぬ顔で働いている。また、妻のいとこも法輪功の信者で、今でも改宗せずばりばりの活動家であるということで、親戚一同困り果てているそうである。さらには妻の田舎の実家の近所のおじさんで、いつも私が行くとちょろちょろ庭に入ってきていた人も信者だったというが、今ではどこかへ越してしまったという。

法輪功はすでに非合法団体とされ、中国はこれをオウムのようなカルト教団と見なしている。この報道でアメリカの「ブランチ?デビディアン」や「太陽寺院」とともにやたら引き合いに出されるのが日本のオウムであるが、諸外国の目からは法輪功取り締まりは宗教弾圧に見えるらしい。だが法輪功がカルト教団であるばかりか危険な政治的集団であることは、中国国内の報道を見れば、それが大本営発表で鵜呑みにできないことを差し引いても十分に分かる。日本の報道では、法輪功に直接の実害を受けた被害者のことはあまり出ていないであろう。実名顔写真付きの中国国内でのそれらの報道は、あながちでっち上げとも思われない。それらは、金銭を騙し取られたなどといったレベルにとどまるものではない。その特徴として、法輪功の教えに従って医学を拒んだばかりに手後れになって命を落とした人ばかりでなく、その修練をしたことによって精神に異常を来した人も多い。法輪功とは宗教的に見ても、何か悪霊に取り付かれやすくなる魔術みたいなものなのだろうか。とにかくその被害者の数はオウムの比ではない。

 


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