日本の報道でもご存じの方が多いであろう「法輪功」。現在、大連でもあちこちに「法輪功」の活動を禁止する通知書がべたべたと貼られている。そして中国の新聞?テレビは毎日かなりのスペースと時間を割いて「法輪功」批判を行っている。
そもそも「法輪功」とは何か。仏教の教えをベースとした、気功の学習集団と説明して間違いがないだろうと思う。私も大連のあちらこちらの公園などで、法輪功の人々が気功の練習をしていたのを目にしていた。それ自体特に問題にすることでも何でもないはずである。しかし、今年の4月に北京の中南海(=国家主席やそれに準じる人々の公宅、及び水面下での政治のあれこれの舞台のある場所=天安門のすぐ隣だが絶対に入ることはできない=中国最後の秘境)を法輪功の人々が取り囲んで抗議をしたというのが、中国共産党の怒りに触れた。そして7月のある日、中国共産党の指示のもと、法輪功に関わる人々を一斉逮捕し、その弾圧に乗り出したのである。指導者の「李洪志」は、いち早くアメリカに脱出したため拘束されることはなかったのだが、彼は当分(あるいは永久に)中国に帰ることはできないだろうと思う。
法輪功の何がそんなに中国国家をあわてさせたのだろう。
いろいろ考えられなかで一番は、その信者の数とその参加者なのだろう。 仏教も気功も中国ではごく日常的に触れることができ、それ自体取り立てて問題にすることではない。しかし日本と同じように、ここ本場中国でも、気功はちょっと摩訶不思議な雰囲気を持った物として認知されている。本当とも言い切れないし、嘘だとも言い切れない何とも曖昧なものである。そこで気功を学習したい潜在的な人々はかなりの数がいたのである。
指導者の李洪志はそこを上手くついた。彼は「病気というのは気のバランスが壊れた状態。薬を飲んで治ったように見えても根本的には治らない。法輪功の気功バランスを整えれば完治する」というような宣伝を行い、さらに多くの信者を獲得した。その中には共産党の指導者もいたらしい(日本でも似たような宣伝をしている宗教集団があるよなぁ)。信者は日に日に増え、日本を含む外国にまでその範囲が広がった。これに焦った共産党指導部は「法輪功は異教徒集団である」という通告を行い、これに対する抗議行動が、4月の中南海包囲だったわけである。
教祖の一声で中国の政治の心臓部を包囲できる集団の出現は、指導部の背筋を寒くしたであろうことは想像に難くない。そこで現在、第2の李洪志が出ないよう、徹底的に法輪功の批判を行っているわけである。
ところで、この一連の流れの中で傍観している私には、延長線上にインドのサイババが頭に浮かんでくる。インド政府がサイババを拘束しようとしたという話はまだ聞いていない。インドはまとまっているようで、まとまっていない部分があることを認めた国家なのだろう。まとまっていないかもしれないのに、まとまっているという強硬姿勢を見せなければならない世界第3位の面積の多民族国家は、やはりつらい部分があるということなのだろう。