朱鷺生態園の野生復帰ステーション内のトキ
トキは、日本人にとって特別な鳥です。でもそれは、日本だけでなく、中国や韓国でも同じようです。私が最前列で案内係の郭さんの話を聞いているとき、朝鮮の記者も同じように私のすぐ隣で一緒に聞き入り、質問を投げかけていて注目度の高さを感じました。
トキは、19世紀半ばまでは日本各地のほか、ロシア、朝鮮、中国などに多く生息していました。しかし、それぞれの国での乱獲や開発により、20世紀にかけて激減し、朝鮮では1978年の板門店、ロシアでは1981年のウスリー川を最後とし、日本では2003年に最後のトキであるキンが死亡し、生き残っているのは中国のトキのみとなりました。
1998年に来日した当時の江沢民中国国家主席は、「日中友好の証」としてトキを贈ると表明し、1999年に友友、洋洋のペアが贈られ、その後日本では人工的な繁殖に初めて成功し、ヒナは優優と名付けられました。
生態園案内係の郭さんによると、現在、野生では約1000羽、飼育下で約1000羽の計2000羽が中国に生息しているといいます。生態園には約100羽いるそうです。
トキの保護における環境的な条件は大変厳しいものであり(大気汚染不可など)、農民を巻き込んで町全体の環境に注意する必要があり、町の中心部から半径10kmにおいては、無農薬で農業が行われ、トキの餌の確保に務めているということです。JICAは、2010年9月より、洋県など3箇所で「人とトキが共生できる地域環境づくりプロジェクト」を実施しています。トキの生息域拡大のためには、トキの保護と農民の生活を両立させなければなりません。トキは水田から餌を見つけますが、その餌場の確保のためには農薬を制限する必要があり、結果農民の収入低下につながります。JICAが実施するこのプロジェクトでは、有機農業のモデル事業を支援し、人とトキが共生する環境作りを推し進めています。日本と中国とが協力し合ってトキを保護しており、トキがここでこうして見られることはまさに「日中友好の証」ですね。(林)
野生復帰ステーション内で餌を食べるトキ
「日本島根県出雲市議会の寺田昌弘会長による認養」と書かれたトキのケージ
出雲市との交流
島根県出雲市では、1991年より漢中市と交流と開始し、2000年からは朱鷺生態園のトキを、市民などの寄付金によって「認養」(飼育繁殖の資金支援を実施)しています。
トキに関する資料や映像資料などが展示される建物
案内ボードにも日本語がある
朱鷺生態園