春節時期に蔚県を訪れたなら、伝統行事のにぎやかな慶祝の気分ばかりでなく、この地の特色ある軽食も見逃せない。蔚県の人々の伝統的飲食習慣は、粟や雑穀を主食とし、漬け物や干し豆腐や揚げ豆腐などを副食とする素朴なものだった。「朝はかゆ、昼は糕(穀物の粉を蒸して固めた食品)、夜はねばねばのヤマイモ」というのがかつてのこの地の人々の標準的な日常の食生活だった。現在では生活水準が高まり、米のご飯や小麦粉が日常の主食になってはいるが、この地の人々の雑穀を好む食習慣は現在も受け継がれている。
蔚県の人は朝にはよく粟のかゆを食べる。この地の粟は粒が大きくて粘り気があることで知られ、明、清両代には皇室への献上品になっていた。糕はこの地の人が昼ごはんに食べるのが好きな食品。コーリャンの粉で作るものもあれば、キビのものもあり、特に春節には油で揚げた糕が欠かせない。この地の人はキビの糕を切り分けてギョーザの皮状にし、それに小豆あんや黒糖を入れて三角形に包み、最後に油できつね色になるまで揚げて食べる。蔚県にはまた「糊糊麺」と呼ばれる、雑穀や豆を煎ってひいた粉を煮詰めた糊状の主食があり、消化がとてもよく疲れを取るとされている。「糊糊麺」は口に入れるとコーヒーのような味がするため、地元では「蔚県コーヒー」とも呼ばれる。この上に煮たヤマイモを載せて食べるのが、地元でよく見られる夕食だ。
春夏秋冬、蔚県の人が愛してやまない冷たい食べ物が暖泉鎮の特産「粉坨」だ。打樹花が行われる時には、沿道に屋台がずらっと並び「粉坨」を売る。店主は細長い包丁を使い、エンドウの粉で作られた大きな粉坨の固まりを細長く切り分け、ごま油、酢、からし、ラー油などの調味料を加えて、滑らかで口当たりのいいものに仕上げる。現在、普段は美食をたっぷり食べている北京人は、蔚県を訪れるとこの地の雑穀スナックを食べて魅了される。多くの「吃貨(食いしん坊)」たちは本場の味を求め、わざわざ路地裏に分け入って小さな店を探し出すという。