ある時期、人民寺院、ブランチ?ダヴィディアンズ、オウム真理教など破壊的カルト教団が全世界を脅かしたことがありましたが、このたびは、中国社会科学院世界宗教研究所卓新平所長、中国社会科学院法学研究所屈学武研究員、中国社会科学院世界宗教研究所習五一研究員、上海社会科学院宗教研究所羅偉虹研究員、河北省柏林禅寺方丈明海法師、イギリス?ロンドン?スクール?オブ?エコノミクスのアイーリン?バーカー教授、日本北海道大学桜井義秀教授に、破壊性を特徴とするカルト教団について深く分析していただき、それに対する措置を検討しようと思います。
(司会者 邱震海)
番組をご覧いただき、ありがとうございます。宗教は人間の正常な心理的欲求といえますが、人々のこの正常な欲求が一種の神秘的な世界に入っている、あるいは教主に対する熱狂的な個人崇拝になっている場合、警戒心を高める必要があります。このほど、深圳にて、この問題についてのシンポジウムが開かれました。まず、その様子を見てみましょう。
2007年12月6日から8日まで、中国社会科学院世界宗教研究所が主催するカルト教団に関する国際シンポジウム(INTERENATIONAL SYMPOSIUM ON CULTIC STUDIES)が深圳で行われ、イギリス、日本、韓国、インド、ウクライナ、中国大陸、香港、台湾の学者たちがシンポジウムに出席しました。シンポジウムでは各国のカルト教団出現の背景、活動方式、なかでも破壊的特徴のある宗教団体についての情報交換と学術上の検討が行われました。熱狂的な宗教崇拝とカルト教団は古来から存在したものですが、ある学者は、カルト教団の識別には、以下の3つの方法があると指摘しています。一つ目は、カルト教団の創始者は、往々して集体の権利を自分ひとりで握り、自分には特殊な使命と特殊な知識があると言って、信徒たちの崇拝を煽ります。二つ目は、カルト教団では、教主一人が上にいて、信徒たちをみな下におき、教主が最高権力をにぎります。3つ目は、カルト教団は往々してたくみな勧誘方法で、信徒たちのマインドコントロールと洗脳を行います。信徒の自らの時間、金銭、体力などすべてをその集団が標榜する目標に捧げるよう強います。各国のカルト教団のなかには、破壊性を特徴にする集団も現れ、その行動が社会と公衆に対して傷害を与えたため、法律の懲罰と裁きの対象となっています。
さて、今回の国際シンポジウムを機会に、われわれもスタジオで、専門家や宗教界の方々といっしょにこの問題を検討しましょう。ご紹介いたします。私の右側におられます卓新平氏は、1981年に中国社会科学院マスターコースを卒業し、1983年から1987年までドイツのミュンヘン大学に留学し、博士号を取得しました。卓氏は中国社会科学院の世界宗教研究所の所長、ドクターコースの指導教官としてご活躍のほかにも、ドイツ宗教史学会の終身会員でいらっしゃいます。
私の左側に座っている方は、習五一教授です。1981年に北京師範大学歴史学部を卒業し、1991年から1992年まで、日本外務省の招きで、岡山大学の客員研究員となられました。習教授はこのたび『カルト教団の解析――比較文化研究の観点から(Analysis on Cult——From a cross-cultural research perspective』をテーマにした論文を提出しました。
習教授の隣にいらっしゃるのが、上海社会科学院宗教研究所の研究員、羅偉虹教授です。羅教授が提出した論文のテーマは、『カルト教団の社会的張力(The Social Tension of Cults)』で、アメリカのさまざまな種類の宗教団体の社会的張力と宗教団体の邪教化防止における人々の思考と社会的努力を分析しています。
明海法師は、河北省柏林禅寺の住職でいらっしゃいます。1991年に北京大学哲学科を卒業し、1989年に仏学の研究を始め、1992年に出家なさいました。伝統的な宗教にとって、多くのカルト教団は偽物であるとは、明海法師の名言であります。
まず、卓教授にお聞きしたいのですが、いったいカルト崇拝とはなんでしょうか? カルト教団はどういうものでしょうか? また、破壊的なカルト教団はどういうものでしょうか?
(中国社会科学院世界宗教研究所所長 卓新平)
カルト教団のカルトとは、西洋語のcultから来ています。一種の神秘的な崇拝で、精神交感などの方法で現実の欲求と具体的な利益を求める、社会においては非主流の周辺団体です。カルト教団には少なくとも3つの要素があります。一つは、神秘的?熱狂的な崇拝の現象があること。もう一つは、現実的?具体的な利益を求めること。3つ目は、非主流で社会の周辺的団体であることです。
われわれが今関心をもっているのは、多くのカルト教団が持つ破壊的な特徴です。破壊的特徴とは、いったいどういうもので、何によって破壊的特徴があるとするのですか?
(中国社会科学院世界宗教研究所研究員 習五一)
カルト教団のほとんどは規模が小さく、制度化されておらず、普通、一人の教主がトップリーダーとなり、個人的な神秘体験を強調します。その集団はほとんどが閉鎖的、あるいは半閉鎖的な方式で活動します。これには、不確定要素が隠れています。そのうち極めて少数のカルト教団が極端に走り、破壊的なカルト教団になってしまうのです。
羅教授、今回ご提出になった論文のテーマは『カルト教団の社会的張力(The Social Tension of Cults)』ですね。カルト教団が社会に対して破壊的な特徴を持つとのことですが、それでは、カルト教団と社会との間にいったいどのような関係が現れるのですか? そしてその張力とはいったいどんなところに現れるのでしょうか。
(上海社会科学院宗教研究所研究員 羅偉虹)
まず、教主は正常な状態の下で生まれたものではなく、自称したに過ぎません。自分は神通力をもち、神の命を受けたと言います。こういう人物の出現は、必ず社会の大きな争議を呼び起こします。伝統的な宗教は、このようなことに非常に反感を持ちます。信徒と社会の間には、間違いなく多くの争議が起こります。そのほか、一部のカルト教団は意図的に伝統に背き、社会の倫理や道徳に背きます。例えば、金を不当にかき集めたり、集団乱交を行ったり、信徒の人身拘束を行ったりして、世論の批判を招きます。
明海法師、あなたが一部のカルト教団を「宗教の質の悪いニセモノだ」と言ったのは、伝統的宗教からの偏見でしょうか? それとも学者の立場から、自分の観点の核心を述べたのでしょうか。
(河北省柏林禅寺住職 明海法師)
私がそう言ったのは、現代宗教学者が「宗教市場論」を提出したとき、この例えを使って自分の考えを述べたからです。私は、宗教信仰が自由で、布教がしやすく、邪教が世界の各地に現れている現在において、人々は識別能力をもつべきだと言いたかったのです。仏教から言うと、現在の学者の方々がいう「カルト教団」は、未知の現象というわけではありません。お釈迦様の時代からインドには、仏教のほかに外道、つまり仏教ではない宗教が96種類もありました。彼らが関心をもつ問題は宗教に近く、あるいは極限面、信仰面、神秘体験面における問題であります。破壊的カルト教団は、仏教から見ると、3つの方面から分けることができます。一つは、宇宙や人生のもっとも根本的な境地、哲学的見地からです。これらは、仏教がもっとも重視することです。もう一つは、その主張する倫理道徳です。三つ目は、その神秘体験が正統か否かです。
ただいまのみなさまの見方を伺うと、2種類のカルト教団があると、まとめることができるようです。一つは、破壊的特徴を持つもので、もう一つは現在のところは破壊的特徴を持たないものです。テレビをご視聴の方々にとってもっとも興味深いのは、破壊性を持つにしても持たないにしても、なぜそんなに多くの人がカルト教団に参加するか、ということでしょうか。
歴史上、さまざまなカルト教団が存在していましたが、20世紀後半、つまり第二次世界大戦以降、人類社会がグローバル化に向かって発展する過程において、社会変化の出現、信仰の多元化などの現象が現れ、カルト教団はまさにこれら状況の下で現れたものです。カルト教団は実際上、伝統的な信仰追及によって生じた疎外であります。しかも、多元化した社会において、カルト教団は自らの生存方法を求める過程において、社会の主流に抵抗する、比較的小さい秘密団体を結成したのです。この団体を正確に取り扱わなければ、社会の主流文化?社会秩序に対する衝突と矛盾を生じ、社会問題や社会の安定を脅かす要素となりかねません。
今回のシンポジウムに出席した日本人学者の桜井義秀氏は、彼の論文にこう書いています。日本では、多くのカルト教団の信者たちは、実は宗教的信仰を持っておらず、宗教がどういうものかということさえ、よく分かっていません。しかし、彼らはカルト教団に屈従しています。その背後には、個人的な心理的原因、あるいは社会的原因があるのではないでしょうか。
カルト教団は実は現代化の歩みとともに発展してきたものです。1960年代、とくに先進国家に数多くのカルト教団が発生しました。貧困がその原因ではなく、多くのメンバーはエリート、高学歴の若者で、白色人種でした。
これはおもしろい問題です。いままで、われわれはほとんどのカルト教団のメンバーは、愚かな人々だと考えていました。しかし、実は、彼らは高収入?高学歴の社会的地位が高い人々です。これは、何を意味するのでしょうか。さらに深層における社会的背景とはいったいどんなものなのでしょうか。
私は2つの面からこれを分析します。まず、カルト教団に参加した人は、精神的なニーズだけでなく、物質的なニーズももっています。このニーズはしばしば、伝統的宗教における信仰とは異なるものです。伝統的な宗教信仰は、一種神聖な、究極の目標を強調しており、現実の問題解決には関心を持っていません。しかしカルト教団は、あなたの精神的?物質的な問題を解決することを強調します。さらに一方で、カルト教団の創立者は人々のこういう心理を利用し、自分に超能力があると言って、今すぐあなたの精神的問題と物質的問題を解決することができると言います。こうして、双方の利害は一致して、徐々にカルト教団が形成されるのです。
学者として研究の視点から見ると、普通の宗教団体が破壊的なカルト教団に発展するのには、必然のロジックがありますか? どういう状況で破壊的なものに走っていくのですか?
宗教学から見れば、教主への崇拝が極端に走れば、絶対崇拝になります。一人だけが高い場所におり、すべての信者を下におき、教主の指示を唯一の真理と崇めさせ、世俗の法律よりも高いところにおきます。教主が悪人であった場合、あるいは悪くなっていった場合、世論の批判を受けると、教主は不満を募らせ、社会に抵抗するようになります。ひとりだけピラミットの上にいて、すべてを支配するというシステムですから、信者たちは自我を失って教主に盲目的に服従し、教主とともに極端に走り、社会に対する衝撃となります。
ここに話がきますと、回避できない問題にぶちあたります。数年前に、中国に現れた相当な破壊力をもつ組織、つまり法輪功については、どのようにご覧になりますか?
法輪功は、いま習教授が述べたことにとても当てはまると思います。カルト教団として現れた当初は、社会的にはその破壊性は現れておらず、普通の気功?健康組織でした。しかし、仏教から見れば、その説法とやり方にはすでに破壊性の種を含んでいました。この種は、どんなものかといいますと、それは、教主が自らの権威を限りなく誇張し、信者に盲目的な追従を求めるものです。同時に、教主は信者に閉鎖的でコントロールされた考え方を教え、それで信徒たちの思想の上からコントロールしようとしました。これらの特徴によって、信者数を増やし、社会的影響を拡大させるにしたがって、欲望も膨らみ、より大きい世俗的欲望、社会権力などの各方面の欲望を刺激します。こういう団体が内在する欲望の拡張は、必ず社会との衝突を生じます。初めはこの衝突は信者の家庭や反対する友人との間で、個別に発生します。時間が経つと、団体と社会との衝突にまで発展します。このような発展のロジックは、仏教の経典のなかにも、生き生きと描写されています。
さて、われわれは破壊的カルト教団の特徴、その背後にある心理的あるいは社会的土壌、中国にある特殊団体の法輪功がこの枠組みの中で置かれている状況について一応理解しました。では、ちょっとひと休みをしてから、外国の学者が、この問題についてどう見ているかについて聞いてみましょう。
番組を引き続きご覧いただき、ありがとうございます。深圳で開かれたカルト教団に関する国際シンポジウムの出席者には、外国からの学者もおります。これら方々のご意見お伺いしましょう。
「カルト教団」に対する研究?討論のなかで、会議の出席者にもっとも注目されたのは、破壊的なカルト教団のことです。各国の学者たちのその概念の定義には、若干の学術上の不一致がみられますが、破壊的なカルト教団への取り締まりという面では、各国の学者及び宗教界の人々はみな同じ意見を持っています。
(韓国『社会と異端』雑誌社社長 李大馥(Lee Dae bokv)
2007年7月19日、韓国で、社団法人キリスト教異端?偽宗教研究対策協議会(Korean juridical associations Presidents of research Christianity heresy and false religion countermeasure agreement association)にすべての専門研究者たちが集まり、「法輪功」は完全な邪教組織であるとの決定を下しました。われわれは4年以上をかけて、韓国での「法輪功」の活動について、系統的な調査?研究を行いました。彼ら自身は邪教の性質はもたないと言っているものの、われわれは完全に邪教の性質を備えていると考え、上述の結論を下しました。
長年にわたってカルト教団の研究をしている、英国のロンドン?スクール?オブ?エコノミクス社会学教授であるアイリーン?バーカー教授に、会議場でインタビューしました。
バーカー教授、われわれのインタビューをお受けいただき、誠にありがとうございます。周知のように、1960年代から、世界的規模でカルト教団は迅速に発展してきています。そのうちにはかなり破壊的な組織もあります。まず、ヨーロッパにおける状況はいかがでしょうか。
(英国のロンドン?スクール?オブ?エコノミクス社会学教授のアイリーン?バーカー)
ご存知のように、今のヨーロッパでは至るところで、彼らの姿を見ることができます。1960年代から70年代には、カルト教団がますます発展してゆき、ますます多くの人がおかしくなったのではないかというくらいです。しかし、実際はこのようなカルト教団に参加した人は、思うほど多くはないのです。大げさに言われがちですが、信仰をずっと維持して、持続的にカルト教団の活動に参加している人の数は、実はそれほど多くありません。参加者の大部分は参加しても、しだいに熱が醒め、辞めていきます。ですから、さまざまな理由で、カルト教団への反対活動が盛んに展開されています。これらの圧力のため、カルト教団の活動はしだいに秘密活動となり、さらに神秘的な色を添えることになるのです。
お話のなかの秘密活動は非常に興味深いです。普段、カルト教団について知るのは、その破壊的な面がほとんどです。例えば、フランスの太陽寺院や、アメリカのブランチ?ダヴィディアンズ、人民寺院、そして日本のオウム真理教などは、みな破壊的な面を示したからです。それでは、そのようなカルト教団に入った信徒たち、その団体の破壊的な面のあるなしは別にして、その入団動機は何なんでしょうか。彼らは本当にその宗教を信仰しているのでしょうか。
一般的にいえば、少なくとも一時はその宗教を信じていたと思います。しかし、正直に言ってそれら破壊的なカルト教団に入団した人の数は、メディアがいうほどには多くありません。非常に限られていると言ってよいでしょう。そして、これら破壊的なカルト教団の活動も非常に限られています。イギリスには1000個ほど、全世界でもせいぜい数万個ほどでしょう。
先ほど、信仰の問題についてお話になりましたが、例えば、われわれはまだカルト教団に入る人々の社会的背景について、あまり知りません。教授はこれについての調査を行ったことがございますでしょうか。個人的な動機のほか、何らかの社会的原因が、彼らをカルト教団に参加させているのでしょうか。
私は三、四十年ほどにわたって研究を行っておりますが、ひとつの結論を出しています。本当のところ、人によってみな動機は異なります。違うカルト団体に加入するのは、違った原因があるからです。しかし、ふつうの場合、共通する原因は、現状に満足していないということです。あるいは自分の人生に対するモチベーションや満足度が低く、キリスト教やそのほかの教会に入る動機となったのかもしれません。あるいは、人生がつまらない、人生に望みを失った、自分の潜在力を引き出したい、あるいは自分を神格化したい、ちょっと神がかり的な修業をしたい、何か非物質的なものを追及したい、よりよい所に住みたい、などの動機かもしれません。このような考えがこもごも入り混じりあい、精神上の追求になったり、物質上の追求になったりします。しかし、面白いことに、以前の伝統的な宗教でも同じようなことがおこっており、1960、70年代の西方社会では、このような宗教現象がさらに鮮明に現れていたのです。多くの白色人種で中産階級の人々が宗教団体に加わり、かつ敬虔な信徒となる一方で、貧しい黒人の数はそれほど多くありませんでした。一般的には、良好な教育を受け、家庭環境もよい若者が多くカルト教団に参加するのです。
これはとても面白い現象だと思います。なぜなのでしょう。中国でもそうです。なぜ一部の破壊的なカルト教団に参加する人々には、高所得?高学歴の人が多いのですか? それは、今までの我々の認識とは異なります。先ほどの、失望しているとか、希望がないとかいうのは、往々にして教育レベルの高くない人間の特徴です。現在はそれとは違う現象が起きているのです。高所得?高学歴の人々がしばしばカルト教団に参加するのです。バーカー教授、この方面についての研究を行ったことはありますか? その深層にある原因とは、一体なんなんでしょうか?
そうですね。この問題に関する研究も、いろいろな角度から行いました。カルト教団に入る人々の物質的条件に不足はなく、物質上ではかなり満足していて、衣食住の心配はありません。このほかにも、彼らには時間もあり、お金以外のさらに高度な追求を始めるための精力と条件も整っているのです。多くの人にとってお金はすでに問題ではなく、お金と時間をたっぷりもっているともいえるのです。
同時に、会議場で、日本北海道大学の桜井義秀教授にもインタビューしました。教授には日本のカルト教団、特にオウム真理教についての状況を教えていただこうと思います。
桜井教授、インタビューをお受けいただき、誠にありがとうございます。20世紀から、全世界のカルト教団が迅速に発展していったとのことですが、日本ではどのように発展していったのでしょうか? そして、とくに、破壊的カルト教団の日本での発展情況について詳しく教えていただきたいと思います。
(日本北海道大学教授 桜井義秀)
オウム真理教は1995年に地下鉄サリン事件を引き起こし、このオウム真理教は邪教集団だとされました。政府は取り締まりましたが、教団の信徒はまだおり、活動しています。もう一つは統一教会です。統一教会は、日本の社会に様々な問題を引き起こし、彼らの経済的犯罪による被害総額は95億円にも上ります。多くのカルト教団が、学校のキャンパスで様々な布教活動をしていることも、問題となっています。
今、桜井先生が用いた邪教という言葉ですが、日本で邪教はどのような定義を持っているのでしょうか。欧米と同じように、ただのカルト教団なのでしょうか、それとももっと広い意味を持つのでしょうか。
具体的に言えば、日本には今、11のカルト教団といっていい集団が存在しています。
破壊的な特徴を持ったカルト教団に、日本の法律はどのように対処しているのでしょうか。
実際には、明確な法律面での規定はなく、刑法に反した場合には、刑法によって処罰されますが、特別の立法はありません。しかしオウム真理教のような状況に関しては、団体規制法によって処罰されます。それは実際、彼らは社会を乱したからです。そのため3年ごとに、公安調査庁などの関連部門が団体規制法にのっとり、それらの団体に対して調査を行い、監督しています。
先ほどヨーロッパと日本の2人の専門家のご意見を伺いましたが、もう一度、スタジオに戻りましょう。今ここにはもうひと方、法律の専門家である屈学武教授がいらっしゃいます。教授は、中国社会科学院法学研究所刑法室主任で、刑法理論の専門家です。今回、屈教授は、『刑法の破壊的カルト教団に対する規制メカニズムの比較研究(Comparative Study on Criminal Restraining Mechanisms against Destructive Cults)』を出されました。
屈教授、はじめまして。今までの検討を通していくつかの概念がはっきりしてきたように思います。ひとつは宗教に対する概念で、これは本来とても健全なもので、昔から行われてきた人類の普遍的な人間性の追求です。そしてカルト教団というものがあり、さらに破壊的なカルト教団があります。私たちが防止し、対処しなくてはならないのは破壊的なカルト教団に対してです。屈教授は法律の専門家として、法律面ではどのようにしてこうした破壊的なカルト教団に対処すべきだとお考えですか。
(中国社会科学院法学研究所教授 屈学武)
中国で現在採っている方法は、まず行政法から言いますと、もしその団体が破壊的なカルト教団であると認定された場合————もちろん「破壊的なカルト教団」という名称は、宗教界や宗教学での名称で、法律的な言葉で言えば邪教と言います————もし邪教であるとされた場合は、行政法でその教団を取り締まります。それ以外でも、もし邪教の教主あるいは中心的人物が犯罪行為を行い刑法に触れた場合は、刑法における関係条項や規範によって処罰します。例えば金銭を騙し取った場合には詐欺罪、教義を利用して女性にみだらなことをした時は、刑法上の強姦罪となります。
それでは、私たちが最も関心を持っている法輪功の問題に関して、司法においては今後どのような方向で対処するのでしょうか。
法輪功はすでに中国では司法で邪教であるとされています。そのためすでに取り締まられています。ですから少なくとも、表立って存在することはできず地下に潜らざるをえません。できるだけ法輪功の危険な膨張を抑えなければならず、その膨張とは主に2つの方面です。一つは、組織の拡大で、もう一つは活動が活発になることです。
組織の拡大は、主に取り締まりによって解決し、活動については中心人物が行う活動を刑法によって罰します。行政法であろうと刑法であろうと、私たちが法輪功を取り締まるのは、同時に社会に警告を発するという役割もあるのです。
今、私たちは理論的な検討を行い、国際的な状況も参考にしましたが、明らかに破壊的な特徴を持つ法輪功について、周教授はどうお考えになりますか。
社会全体の積極的な要素を引き出し、社会を導かなければなりません。例えば宗教のターミナルケアは、現実的配慮の導入と実践が求められています。現実の生活や社会秩序の中で、ある種の的を得た導きや法律の安定があってこそ、人々の向上心が得られるのです。このような社会こそが、安定しバランスが取れた社会なのです。
現在、まだカルト教団に騙されている信徒が一部にいますが、明海法師は、どうしたらこうした騙された人々を、できるだけ早く救い出すことができるとお考えですか。
法輪功の場合は、必ず李洪志と普通の追随者を隔離しなければなりません。多くの追随者は実のところ被害者なのです。しかし一部の人はまだ法輪功に溺れており、自分が被害者だということに気づいていません。そのため私たちは、まず思いやりをもって正しい道へと導き、正を訴え邪を取り除かなくてはなりません。
習教授、歴史的?国際的な観点から見ると、カルト教団は破壊的な特徴のあるなしにかかわらず、今後も長い間、存在しつづけることになると思います。では私たちは、どうようにこうした現実に直面し、いかに理性的?科学的にこの問題を解決したらよいとお考えになりますか。
世界経済の一体化による発展にしたがって、近代化した生活リズムはさらに速まり、社会に変化や動揺を与えています。文化の多様化は、様々なサブカルチャーに豊かな活動の空間を提供しました。そのためカルト教団というある種のサブカルチャーは、長期にわたって存在するでしょう。これは、特に発展中の中国の学者として、真剣に関心をもつ必要がある課題です。というのは、破壊的カルト教団が社会にもたらす衝撃は、発展途上国家においては先進国をはるかに上回る強いものだからです。発展途上国の社会保障システムは現在まさに作られているところであり、そのためリスクがかなり高いのです。そのため発展途上にある国の学者は、カルト教団の破壊的要素に注意し、有効な対策を講じ、破壊力を弱めなくてはなりません。
番組の最初で言ったように、宗教は人類にとって正常で健全な精神的要求です。しかし、そうした精神の求めがある神秘的体験の世界に入った時、あるいは教主個人の崇拝という要素を帯びたとき、状況は往々にして微妙なものに変わっていきます。カルト教団はそのよい例でしょう。そうしたカルト教団が社会に対してある種の破壊的な特徴を示した時、それは宗教や精神的要求の範疇には決して含まれません。その時はただ法律的手段に訴えるしかありません。この点では明らかに、国際的なコンセンサスが得られています。さらにこれは、私たちが日常生活で、カルト教団を見分ける手段や基準にもなるものです。みなさまのご関心と番組のご視聴に感謝いたします。また来週、同じ時間にお会いしましょう。