●法輪功禁止の背景
中国政府は、7月の終わりに法輪功を禁止した。中国政府は、その禁止以来、法輪功の影響力を根絶する運動を大々的に展開し、“封建時代の迷信の高揚”に対する威嚇を続けている。
中国の新聞は、法輪功とその創始者である李洪志について、暴露と非難の記事を毎日大量に載せている。7月30日、政府は李洪志の逮捕令状を発行した。
ところで、法輪功の事件は、1989年の出来事以来、最も重要な政治的進展をもたらす可能性を持っている。それは、法輪功の信者数が非常に多いという理由だけではない。最大の理由は、法輪功は共産党と政府機関内部からの保護と援助を受けて、ここまで大きくなったという事実である。そして、その援助をしていた人たちの中には、かなり高い地位にいる人物も含まれているからである。
しかし、この問題を純粋に“中国産”の危機だと考えるのは大きな間違いである。イギリスは、長年に渡って中国に揺さぶりをかけてきたが、今回の事件のタイミングと状況、そして法輪功の主な特徴は、イギリスの戦略と“完全”に一致している。
法輪功事件が起こったのは、中国大使館が爆撃され、そして、台湾の李登輝が挑発的な発言を行ったのと同時である。
中国の上層部は、クリントン大統領と前向きな関係を築こうとしており、穏健な国内政策と対外政策を推進している最中だった。しかし、法輪功問題が生じたことにより、中国の上層部は、より一層の圧力をかけられた。
様々な証拠の示すところでは、非常にハイレベルで、深遠な作戦が進行中である。その作戦は、イギリスのフィリップ殿下を中心にした勢力が、長年に渡って、中国に“環境保護”イデオロギーを広めようとしていることと関係がある。
フィリップ殿下は、「仏教と道教は、反産業的“宗教的環境保護”運動をアジアで進めるためのポイントである」と述べている。
さらに、中国に影響をまき散らしている、英米系の有力マスメディアとスポーツカルテルもその作戦に関わっている。特に、イギリス諜報機関と結びついたホーリンガー社と、オーストラリアや香港などの元英連邦地域、あるいは現在英連邦に加わっている地域を本拠地として運営されている企業である。
しかし、ここで機能している最も重要なファクターは、必ずしも、外国勢力が直接法輪功を動かしているということではない(もちろんそれも見逃せないが)。むしろ、イギリスが、他に類を見ない巧みなやり方で“文化戦争”を主導しているということである。
イギリスは、中国の人民とエリートの歴史的、文化的弱点を徹底的に研究した上で、その戦争を進めている。これは、仏教徒と道教信者だけに関係のある問題ではない。
今世紀の初め頃、共産党と政府の上層部は、知識階級を指導する際に、バートランド?ラッセル、ジョゼフ?ニーダムの影響を簡単に受けてしまった。その事実に対して、彼ら自身が明らかに気づいていないということも関係しているのである。
●でたらめな非合理主義
一見したところ、法輪功は、でたらめで非合理な仏教?道教カルトの類である。このようなカルトは、何世紀も前から東アジア社会に広がっており、今日でも東アジア全域で盛んに行われている。
法輪功自身は、「驚くほど強力で、特別なタイプの気功」だと宣伝している。
気功というのは、中国で多くの人が実践している伝統的な鍛錬法の一つである。特に年齢の高い層に人気があり、健康に良いと思われている。気功を教える学校は、中国の至る所に無数にあり、法輪功が多くの人々を獲得したのは、明らかにこういう背景があるからである。
気功は分派は多く、お互いに異質なものの集合体となっている。
法輪功の創始者で、唯一人の導師である李洪志は、そのような“鍛錬法”と“カルト信仰”としての気功集団を統一する、卓越した存在になりたいと思っている人物である。李は、“超自然的な力”について、でたらめな主張を行っている。
李は、「法輪功の修行をすれば病気が治る。病気にはかからないし、環境汚染の影響も受けなくなる」と言って、人々を引きつけている。しかし、通常の医療を拒否したために、多くの信者が病気によって死んでいる。
さらに法輪功は、「地球はまもなく爆発する」と教えている。
李洪志は、無謀にも近代の科学と技術を非難している。李は、「近代の科学と技術は、社会道徳を破壊した」と主張する。
法輪功のマークは、中央に大きな卍(仏教の伝統的なシンボル)があり、その周りに複数の大極が配置されている。李洪志は、次のように発言している。
「これはヒトラーのまんじとは違う。“特別な力”を持った人たちは、法輪功のまんじが回転しているのが見えるからだ。」
この卍は、一方の方向で宇宙のエネルギーを吸収し、もう片方で放出しているそうである。
李洪志は、「中国人は、国際結婚はすべきではない」と勧めている。それは“民族の特質”を保つためだということである。
李洪志の著作群は、原始的な性格を持ったインチキであり、主に中国の最も無学な層にアピールしている。特に高年齢で、職がないか、パートタイム労働で、健康に不安のある人などが信者になっている。
李洪志は、「信者は中国に1億人」と主張しているが、これは誇張した数字である。中国政府が発行している新聞は、次のように強調している。
「法輪功は、政情不安定の原因を作っているが、これは深刻な問題である。この問題は、“科学を普及”させ、教育水準を上げ、生活水準を上げることで、克服しなければならない。」
そして、中国の優秀な科学者たちが、法輪功についての公開討論会を行っている。大変興味深いことに、科学者たちには、そのような文脈において、特別に重要な役割が与えられている。
この公開討論の意図は、明らかに、単に法輪功を攻撃することにあるのではない。それだけではなく、科学の普及を目的とした、積極的な運動を進めようというところにあるのである。
●ホーリンガー社とオルブライトは、直ちに李洪志を擁護
ホーリンガー社の『デイリー?テレグラフ』(本社-ロンドン)は、真っ先に李洪志を擁護し、中国政府が法輪功を禁止したことを非難した。
7月27日、同紙は、李洪志のインタビューを中心にした記事を掲載している。その記事では、李洪志が称賛されており、一般に普及している法輪功の呼吸法と、神秘的な病気直しが称賛されていた。そして、「李洪志が健康そうに見えるのは、法輪功の実践が正しい証拠である」とまで述べていた。
今も活動中の李洪志は、「法輪功の活動は、完全に非政治的である」と述べており、さらに次のように述べたと書かれている。
「アメリカ政府が多くの中国人スパイが国内にいるのを許しているのか、私には理解できない。」
さらに李は、「イギリスは、法輪功に対する中国政府の野蛮な行動を止めるために、介入してほしい」と述べている。そして、「政府のやっていることは、文化大革命の時とそっくりだ」ということである。
イギリスのハイレベルのインサイダーで、中国の専門家である人物と討論する機会があった。その時の彼の反応は、さきほどの『デイリー?テレグラフ』の記事の内容とそっくりである。
彼は、中国政府が法輪功に対して取った行動を非難しており、奇妙なことに、「その状況は、1世紀前に起こった義和団事件に似ている」と述べていた。
義和団の反乱は、当時の政府にはコントロール不可能だった。
「私は、2500万人が死亡した太平天国の乱のことも思い出す。これらはまだ中国人の記憶に根強く残っていて、中国ではこのような歴史が推進力の一つになっている。我々が見ている状況は、現在の中国よりも、過去の中国と結びついたものなのである。当局が愚かな行動を取れば、反乱を引き起こす可能性がある。」
NATOによる中国大使館爆撃事件と、台湾の李登輝による挑発的な発言が与えた心理的な影響について、彼は次のように言った。
「中国の歴史では、国家主義者と実存主義者が疑いを持った時、中国の内政は崩れ始めている。私は、今の状況は、その大詰めの場面にさしかかっていると考えている。まさに、内的爆発の始まりである。」
●アメリカは罠にはまるか?
イギリスにとっては望ましい、しかし狡猾なこの考え方が、実現するかどうかはまた別の問題である。現状としては、中国政府は状況を十分コントロール下に置いているように見えるからである。
しかし一方、国務長官“マッド?マデリン”?オルブライトは、アメリカを無理やりに引きずって、アメリカに法輪功を擁護させるという罠にはめた。7月25日に始まったASEAN会議において、オルブライトは、中国政府の法輪功の扱い方について、中国の唐外相に不満を言ったそうである。
アメリカは、李洪志と彼のセクトのために、愚かな“人権”キャンペーンを始めている。しかし、この危険な山師である李洪志は、1996年からアメリカに住んでいるという事実がある。
この状況は、中国のアメリカに対する怒りを煽るためには、理想的なチャンスとなるだろう。そして、イギリスが法輪功問題を操っていることに関して、人々の目から注意をそらすためにも、絶好のチャンスとなるだろう。
http:/ews.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=1999&d=1117&f=column_1117_001.shtml