当相談室では大切な人をカルトの罠から救出するため奮闘しておられる家族の方を積極的に支援しています。
このページではカルトメンバーになってしまったあなたの大切な人とのコミュニケーションの方法について綴っていきます。
あなたの大切な人が、カルト教団の活動に夢中になっているのであれば、強制的に脱会を説得することはできません。
ある程度まで本人の信仰と教団での活動を認めつつ、話し合いを続けながら説得していくしかありません。
ところがこれが忍耐がいるのです。
コラム カルトメンバーの心理と家族の葛藤をご覧ください
周囲の人間が本人をカルト宗教からやめさせることはできません。しかし本人がやめることはできます。
私たちができることは、本人が自らやめることができるよう、対話を続け、そして環境調整をすることです。このやり方で見事メンバーを救出した方は非常にたくさんいます。
どんなに「昔と変わってしまった」ように見えても、「家族に敵対的に見えた」としても、昔から持っていた「良心」とか「親御さんに対する愛情」などは、カルトメンバーの心の中に、失うことなく残っているのです。
カルト宗教メンバーに対するカウンセリングの本質とは、カルトメンバーと「親しみと信頼の関係」を作り、「コミュニケーション」を積み重ねながら、本人の心の中に眠っている「良心」とか「良識」を呼び起こすことです。
そのために必要なことをこれからお伝えしていきます。
ただし、カルト宗教に入信してごく初期の場合は外部情報を与えることでスムーズに脱会できることがあります。
Ⅰ あたまごなしに教団を批判することをやめる。
組織の活動に夢中になっているメンバーの場合、頭ごなしに組織を批判したり、無理やり説得しようとしても、うまくいかない場合がほとんどです。むしろ相互のコミュニケーションは悪化し、反対する家族や友人が悪者にされてしまいます。
このような「負の連鎖」を断ち切り、まずはコミュニケーションの回路を改めて作り直さなければなりません。
そして、本人と話し合うときには、必ず礼節を守ってください。本人の人格やプライドを傷つけるような言動は厳禁です。
親子の間であっても、です。
元信者の証言
キリスト教系A教団
家族の良かったと思われる対応
?「お前は一生懸命だけれど」と自分のことは常に評価してくれた。時間的ゆとりを与えてくれ、どんな話でも忍耐強く聞いてくれたのが良かった
?自分が話すことについていったんは受け入れてくれたこと。家族も一緒になって勉強してくれたこと
家族の悪かったと思われる対応
?偏見と思い込みでものを言うし、自分の言うことが家族にきちんと伝わらない。自分たちのことは棚にあげて偉そうなことを言う。
?なんとか脱会させたいと圧力ばかりかけてきた。心を閉ざすより他はなく、長い膠着状態が続いた。時間のかかりすぎはかかわり方に問題があったからだと思う。
「大人として認めてもらっている」「大人として信頼されている」という安心感があるからこそ、本音での話し合いに近づいていくことができるのです。
マインドコントロールの影響下にあると、「組織にとって都合の悪い事実」から本能的に意識をそらす癖が身に付きます。
教義上の矛盾点を指摘したり、組織の悪い評判を話した時に、「それには何か深い理由がある」とか「このまま続けていればいつかわかる」といったふうに問題から目をそらし、その場で考えることを放棄してしまうのです。
これは「思考停止のテクニックと呼ばれていています。
Ⅱ本人の心理について知ること
当人が何をどのように信じているのか、何をカルト宗教に求めているのか、何をめざしているのかを考えていきます。
まず、本人が入信している教団のことを可能な限り調べます。
教団の教義、行動規範、組織の形態などを、教団の著作物、新聞、公式HP、ネット掲示板での情報など、できる限り調べます。
入信している教団についてはやはりある程度の知識がなければ、本人との話し合いは進みませんし、本人の気持ちを理解することはできません。
Ⅲ 家庭内でのルールを作る。
本人の信仰活動を認めるとしても、すべて相手のいいなりになってはいけません。教団での活動にもルールを設定して守らせなくてはなりません。
ここでは、最低限守らなければならないことをお伝えします。
①対話にあたっての暴力の禁止
話しあいの過程での暴力は一切禁止です。また暴力行為は絶対に認めてはいけません。
入信者を暴力的に拉致監禁し、集中的に説得するような手法は当相談室は行いません。
このような手法を用いた場合、入信者は心身に重大なダメージをうけることとなり、脱会後の社会生活に困難をきたす可能性があります。
②教団活動に対する金銭的援助の禁止
毎月決まったお小遣い以外の金銭を渡してはいけません。「お金を渡してくれたらこれを機会に教団をやめる」という話にも絶対乗ってはいけません。
③勧誘の禁止
本人が信仰するのはいいけれど、他の人を教団に勧誘することは禁止してください。それでも本人は親に隠れてこっそりと勧誘しますが、親としては絶対に認めてはいけません。
親御さんのしらないところでこっそりと勧誘するのは止められないとしても、親御さんの知る範囲での勧誘活動は禁止してください。
以上の3点は絶対に守ってください。
その他のルールについてはそれぞれの家庭内で決めていただいて大丈夫です。
ルールは家族の側も守るようにしてください。本人と約束したことは必ず守ってください。
だからルールは親子で守れそうなことを決めてくだい。
そして、本人がルールを破ったときには厳しく怒ってください。
ルール破りを認めると、親の側がなめられてしまいます。
Ⅳ 父母の協力体制を作る
入信者は「夫婦の関係性」をよく観察しています。父母が二人で協力し助け合っていこうとする姿勢は入信者本人に対して良好な影響を与えます。
逆に「母親ばかりが熱心で父親が無関心」であったり、「父と母の間に不信感があった」りした場合、カルトからの救出は非常に困難になります。
元信者の証言~家族の問題
キリスト教系A教団
?教団に入る原因が家族のどこかに問題がある場合がある。「なぜ教団に惹かれるのか」、家族はどのように変わっていったらいいのか、考えてほしい。
キリスト教系A教団
?私が入信したのは父親との関係があると思います。父親は自分にも家族にもすごく厳しい人で、そのうえ自己中心的な人でした。
母親に対しても叱責することがあって、そういう怒鳴り声に子供心に傷ついていました。怒鳴る父がすごく嫌でした。
しかし一方で父親を嫌ってしまう自分を責めるというか、なぜ親を好きになれないんだろうという葛藤を感じていました。
だから教団の方から家系図や姓名判断についての説明を受けて、家族の中で選ばれたのが自分で、あなたが変えていかないと本当の愛を知ることはできないと言われた時にすんなりと納得しました。
そしてこれは自分に必要なものだと感じてすぐにのめりこんでいきました。
親としての意見、感性にズレがある場合は、ご夫婦で徹底的に話し合ってください、
?なぜ、その教団に入信していることに反対するのか?
?その教団の教えのどこがおかしいと思うのか
?脱会したあと、どうしてほしいのか?どんな生活をしてほしいのか?
?今不安なことはないか?
これらのことを徹底して話し合ってください。こうした夫婦の対話の中から、本人に対する「説得の言葉」が生まれてくるのです。
Ⅴ、脱会後の生活を見越した対応をする。
カルト宗教のメンバーは組織を脱会したあと、しばらくの間、心身と感情の後遺症に悩むことがあります。(くわしくは後述します)
「組織はやめたのだけれど、燃え尽きたようになってしまった」とか「家族や友人となじめないとか」、「自分や家族が不幸になるという恐怖感が抜けない」とか????
<P>このような後遺症を残したままでは、これからの人生の質を大きく損ねてしまいますよね。
カルト宗教のメンバーが、脱会したのちも、家族や周囲の方たちは、本人を支え、励まし続けなければなりません。またそれは家族の側の「希望」の押しつけになってはいけません
元信者の証言~脱会後の苦しみ
仏教系D教団
?出たあとはみんなと同じです。焼け野原ですよね。自分が信じてきたもの、積み上げてきたものが全部なくなってしまうわけですから。もう焼け野原にひとりたたずむ、っていう感じですよね。辛かったですね。今までの友だちとかも全部別れるわけでしょ。十数年の人生が全部白紙になるわけで、辛かったですね
脱会後のカルト宗教のメンバーが心身ともに落ち着きをみせ、家族や社会との折り合いをつけ、自分の居場所をみつけられることができることができて、はじめて「ゴール」にたどりついたと言えるのだ、と私は思います。
Ⅵ、決して焦らないこと
説得には時間がかかります。そして、話し合いをはじめてから脱会に至るまでの時間は非常に個人差が大きく、また、「具体的にこれくらいの時間」と予測がつけることができません。
この「予測のつかない」という部分が非常に苦しいところなのです。
しかしながら、本人を救出していくためには挑戦を続けなければなりません。
入信してから脱会し社会復帰するまでのプロセスについてお話しします。
①親しみと信頼の関係を作る段階(拒絶期)
まず、行き詰ったコミュニケーションの回復をはかります。
①「おはよう」「お帰り」「おやすみなさい」という挨拶を励行します。
②教団の話をひとまず横において、世間話や日常会話などをしながら、本人とのコミュニケーションを取り戻していきます。
②本人に教団に対しての疑問の種をまく段階(交換条件期)
コミュニケーションがある程度回復できたところで、すこしづつ、入信している教団の活動や教義について話しをきき、論理矛盾や理解不能な言い分について問いただしていきます。
ただし、ごく少しづつです。一度に説得しようとしてもうまくいきません。
③集中的に情報を与える段階(無気力期)
本人の活動を観察していると、「いつも行っている教団の集会に行かなくなる」といった具合に、教団との距離を置き始める時期がやってきます。
この時期に「教団の反社会性」や「教義の矛盾」などを提示し、脱会を促します。
入信しておられる方への説得にはカウンセラーの同席をお勧め致します。
しかしながら、この時期、本人は非常に大きな葛藤のなかにあり、非常に傷ついている可能性があります。
信じてきた組織や仲間を失う痛みがどれほどのものか????
脱会へのゴールはもうすぐなのですが、家族の方は本人の「痛み」や「傷つき」にも配慮する必要があります。
④脱会後の本人を精神的に支える段階(受容期)
脱会後、本人は大きな傷つきを経験し、心身に不調をきたすことがあります。家族は落ち込む本人をささえていきます。
カルト宗教脱会後の心身の不調と回復のページ
をご参照ください
⑤本人の社会復帰を支える段階(社会復帰)
入信から脱会までに、以上のようなプロセスをとおります。
以上駆け足で解説してきました。
カルトからの救出を、家族の力だけで実行しようとするのは困難です。
また、家族の方だけで対応しておりますと、どうしても不安になってしまったり、孤独感にとらわれてしまいがちですね。
この問題について研鑽をつんだ支援者からの適切な助言と、必要な支援を受けることが必要です。
当相談室もお力になれますので、よろしければご利用ください。
面談カウンセリングを希望される方は
面談カウンセリングの申し込み方法のページをご参照ください
電話カウンセリングも実施しております。
電話相談の申しこみのページをご参照ください。
今は先行きが見えないかもしれません。
しかし諦めずに取り組めば、必ず光は見えてきます。
その日を信じて、一歩一歩進んでいきましょう。
カルト問題をより詳しく知りたい方のために参考文献をまとめてあります。
カルト問題の参考文献
*「元信者の証言」は下記の文献より引用させていただきました。
「カルトからの回復」 櫻井義秀編 北海道大学出版会
「自立への苦闘」 全国統一教会被害者家族の会 編 教文館
网址链接:http://soudanrindou.o.oo7.jp/entry97.html