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“両高”の邪教犯罪に関する新しい司法解釈の解読及び考察

2017-08-10 ソース:kaiwind.com 作者:胡江

2017125日、最高人民法院、最高人民検察院は共同で『組織を作り、邪教組織を利用して法律実施を破壊する等の刑事案件に適用する法律の若干の問題に関する解釈』(法釈[2017]3号)(以下『2017年解釈』と略称)を公布し、201721日から施行した。この司法解釈は従来規定との整合性を基礎とし、邪教犯罪の認定と適用に関わる多くの具体的問題を規定し、この新しい司法解釈の施行後、“両高”は1999年、2001年及び2002年に公布した従来の司法解釈或いは司法文書を再び適用しない。『2017年解釈』条文は計16条で、関連する内容は非常に多く、この司法解釈に対する理解を深めるためには、刑法規定及び刑法原理と結び付けて深く理論的検討を行なう必要がある。本文はこの司法解釈制定の背景を簡単に説明し、6方面からその主な内容を解読する。 

一.解釈制定の背景 

1997年『刑法』第300条にて組織的に民間信仰や邪教組織を利用し、迷信を利用して法律実施を破壊する罪及び組織的に民間信仰や邪教組織を利用し、迷信を利用して人を死亡させる罪を規定し、邪教犯罪の構成要件及び刑事責任を明確にし、邪教犯罪懲罰のための法的根拠を提供した。19991030日、全人代常務委員会は『邪教組織の取り締り、邪教活動の防止と懲罰に関する決定』を採択し、邪教犯罪を厳しく懲罰する政策精神を明確にした。 

正しく刑法を適用するため、最高人民法院及び最高人民検察院は続けて共同で多くの司法解釈或いは司法文書を公布したが、主には1999年公布の『組織的に邪教組織を利用した案件への具体的法律応用の若干の問題に関する解釈』、2001年公布の『組織的に邪教組織を利用した案件への具体的法律応用の若干の問題に関する解釈(二)』、及び2002年公布の『組織的に邪教組織を利用した案件への具体的法律応用の若干の問題に関する解答』である。他に、最高人民法院は1999年に単独で『全人代常務委員会「邪教組織の取り締り、邪教活動の防止と懲罰に関する決定」及び“両院”司法解釈に関する通知』を公布した。これらの司法解釈或いは司法文書は司法機関が正しく邪教犯罪を認定し、社会の管理秩序を維持するため重要な作用を発揮した。 

2015829日、第12回全人代常務委員会第16次会議は『刑法修正案(九)』を採択し、2015111日から正式に施行した。『刑法修正案(九)』は『刑法』第300条で規定した邪教犯罪に対し多方面の修正を行ない、法定刑を無期徒刑まで高め、財産刑を増設し、組織的に民間信仰や邪教組織を利用し、迷信を利用して人に重傷を負わせた行為を罪とし、邪教犯罪の罪数適用基準を明確にし[1]、我が国の邪教犯罪懲罰の刑法規定を更に完備させた。『刑法修正案(九)』にて既に『刑法』第300条に対する修正を行なった状況では、従来の司法解釈或いは司法文書は既に新しい状況下での邪教犯罪懲罰の要求を完全には満足させられず、修正後の刑法規定に基づく新しい司法解釈が必要となった。 

その他、近年来、国内外要因の影響を受け、特にインターネット等の情報技術の発展に伴い、邪教犯罪の行為手段、表現形式、危害結果等に多くの新しい発展状況や特徴が出現し、“伝統と現代の結合”、“都市と農村の結合”、“国内と国外の結合”、“公開と秘密の結合”といった新しい趨勢[2]が出現し、司法機関が邪教犯罪を懲罰する上で新しい困難と問題をもたらし、最高司法機関による新しい状況下での邪教犯罪に対する法律適用問題に対する統一した規定が必要となった。そのため、新しい司法解釈の制定が現実に必要となった。 

二.邪教組織の内容明確化 

正確な邪教組織の認定は、邪教犯罪案件を法的に処理する基礎である。『2017年解釈』は邪教組織の内容範囲を明確にし、第1条の規定により、みだりに宗教、気功或いはその他の名義を用いて設立、主要分子の神格化と鼓吹を行ない、邪説の制作散布等の手段で他人を幻惑、騙し、メンバーを拡大、制約し、社会を危うくする非合法組織は『刑法』第300条で規定した“邪教組織” と認定するべきだと規定した。この規定は基本的に1999年の“両高”司法解釈第1条を踏襲しているが、1999年解釈で規定した“主要分子の神格化”を基礎として“主要分子を鼓吹”の規定を増やした。字句から言えば、“主要分子の神格化”は主に美化して神格化する行為だが、“主要分子を鼓吹”は主要分子の扇動、賛美、法螺吹きといった行為であり、両者とも主要分子に対する法螺吹きと賛美であるが、やはり一定の区別が存在し、“主要分子を鼓吹”は必ずしも主要分子の神格美化ではなく、主要分子の“先進思想”、“光輝な事績”、“仁愛の心”を鼓吹するだけである。実践において、ある邪教組織は主要分子を神格化せず、鼓吹するのみであるが、やはり強力な蠱惑性があり、実質的には依然として邪説を通じて人を幻惑し、社会に害をなす非合法組織であり、邪教組織として認定する事は邪教の違法犯罪活動を懲罰する上で有利となる。『2017年解釈』のこの規定は、厳しく邪教犯罪を処罰し、邪教組織を取り締る精神を表わしている。 

三.邪教犯罪の量刑基準の細分化 

『刑法』第300条の邪教犯罪の規定では計3段階の法定刑があり、一般状況では、法定刑は3年以上7年以下の有期徒刑及び罰金、状況が深刻な場合、法定刑は7年以上の有期徒刑或いは無期徒刑及び罰金或いは財産没収、状況の程度が軽い場合、法定刑は3年以下の有期徒刑、労役、拘束或いは政治権利の剥奪及びまたは単なる罰金である。但し刑法のこの規定を理解し適用する場合は2つの難問があり、第一の難題は、どのように“状況深刻”と“状況軽度”の中味を理解するか?第二の難題は、組織化を実施して民間信仰を利用し邪教組織或いは迷信を利用して国家の法律、行政法規の破壊を実施した行為が、一律に犯罪を構成するのか?というのは刑法で邪教犯罪を罪とする基準と第一段階の法定刑の規定においては、状況の程度、深刻度合いの面での要求が無い。この意味からすると、罪状は行為犯となる。行為犯とは、法定の犯罪行為の完成を表示する犯罪[3]なのである。しかし、刑法は最も厳格な法律部門であり、刑法が懲罰する犯罪は社会への危険性が最も深刻な行為であり、仮に行為犯に対しても行為者が相応の行為を実施したから一律に犯罪として処罰するという意味ではない。事実上、邪教活動について言えば、刑法の規定だけでなく、『治安管理処罰法』等その他の法律法規でも相応する規定があり、邪教活動を認定し処理する場合、刑法とその他の法律との関連性に注意しなければならない。そのため、刑法には邪教犯罪を罪とする基準に状況の程度や深刻性の要求が無いが、刑法の法律性及び刑法とその他の法律部門の関係から判る通り、邪教犯罪を具体的に認定する際、事実上行為の危険性と危険程度を考慮する必要がある。その他、『刑法』第300条第2項で規定した“人を重傷、死亡に至らしめる”状況をどのように認定し法律を適用するか、これも大きな問題がある。こうした法律適用上の困難を解決するため、『2017年解釈』第2条、第3条、第4条、第7条で各々邪教犯罪の罪状基準と相応する量刑基準を明確にした。 

(一)解釈の第2条、第7条は邪教犯罪の罪状基準を明確にした 

2017年解釈』第2条は組織的に民間信仰を利用し、邪教組織が迷信を利用して法律実施を破壊する罪の罪状基準であり、計12項の具体的状況を規定しており、邪教組織の設立、或いは邪教組織が取り締られた後に恢復し、別の邪教組織を設立する等である。第11項で規定した邪教宣伝品の制作散布行為に対し、解釈は具体的な数量基準を規定し、第12項で規定した通信情報ネットワークを利用して邪教を宣伝する行為に対し、解釈は具体的な認定基準を規定した。これらの具体的数量基準や認定基準は、非常に細かく規定され、実務的指導性が強い。同時に、第13項で暴露的な規定を作り、即ち“その他状況が深刻な情勢”である。この規定は、主として実践中に出現するだろうが未だ明確に規定されていない犯罪状況を解決するためである。“その他状況が厳重な”という規定は、邪教犯罪を認定する際、犯罪の社会的危険性を正しく把握し、社会に対する危険性が重大な行為のみを犯罪として処理する。このため、『刑法』第300条では邪教犯罪の構成で状況が深刻、比較的重い等の規定は未だ無いが、司法解釈では明確に“状況深刻”の実質的条件を作成し、この規定は科学的に刑法の性質を把握し、刑法とその他法律部門との協調精神を表わした。ある行為が“状況深刻”に属するかを判断する際、2つの基準を把握しなければならず、一つは相当性基準であり、第13項で規定した“状況が深刻な情勢”とその前の第12条で明確に規定した状況は全て邪教犯罪の罪状基準であり、彼等は社会危険性の上で相当性があり、解釈が未だ明確に規定していない状況に対しては、前面の第12項と比べて社会危険性に相当性がある場合、“状況深刻”と認定出来る。二つは主観と客観を結合した基準であり、“状況深刻”の判断に対し、客観面から行為者が行なった客観的行為及び客観的危険を検討し、主観面から行為者の主観の悪性の大小を検討する。 

2017年解釈』第7条は組織的に民間信仰を利用し、邪教組織が迷信を利用して他人に重傷を与え死亡させた罪の量刑基準の規定である。具体的には3種類、(1)組織的に邪教組織を利用して他人を騙し、1人死亡或いは3人以上の重傷の場合、基準では3年以上7年以下の有期徒刑及び罰金。(23人以上死亡或いは9人以上重傷或いはその他状況が特に重大な場合、7年以上の有期徒刑或いは無期徒刑、及び罰金或いは財産没収。(3)重傷を負わせた場合、3年以下の有期徒刑、労役、拘束或いは政治権利の剥奪、及び或いは単なる罰金。同時に、解釈の規定によれば、“人を騙し、重傷、死亡を負わせ”は組織的に邪教組織を利用し、迷信邪説を作成散布し、メンバー或いは他人を騙して絶食、自虐等、或いは病人を騙して正常な治療を受けさせず、人に重傷、死亡を負わせた行為を指す。 

(二)解釈の第3条は“状況が特に重大”の内容範囲を明確にした 

3項目を含み、一は解釈第2条第1項から第7項までの行為を実施し、社会危険が特に深刻な場合、二は解釈第2条第8項から第12項までの行為を実施し、数量或いは金額が第2条で規定した関連基準の5倍以上の場合、三はその他状況が特に深刻な場合。ここでの“社会危険性が特に深刻”及び“状況が特に深刻”を具体的に判断する場合、案件の具体的事実と合わせて総合的に判断する。 

(三)解釈の第4条は“軽い状況”の内容範囲を明確にした 

3項目を含み、一は解釈第2条第1項から第7項までの行為を実施し、社会危険が軽い場合、二は解釈第2条第8項から第12項までの行為を実施し、数量或いは金額が関連基準の1/5以上の場合、三はその他状況が軽い場合。ここでの“社会危険性が軽い”及び“状況が軽い”を具体的に判断する場合、案件の具体的事実と合わせて総合的に判断する。 

四.硬軟織り交ぜた刑事政策への要求を貫徹する 

硬軟織り交ぜた刑事政策は目下我が国の基本的な刑事政策であり、刑事立法、刑事司法及び刑罰執行の全過程を貫いている。最高人民法院の『硬軟織り交ぜた刑事政策に関する若干の意見』の規定に基づき、硬軟織り交ぜた刑事政策を貫徹し、犯罪の具体的状況に基づき、区別対応を実行し、寛大であるべきなら寛大に、厳格であるべきなら厳格に、硬軟織り交ぜ、その罪を罰する場合、少数に絞って打撃し孤立させ、大多数に教育と感化及び救援を行ない、最大限度に社会対立を減らす。従い、硬軟織り交ぜの核心は“区別対応”にあり、ある学者が言う通り“硬軟織り交ぜは区分対応を以って基本的内容とする”[4]である。邪教犯罪の発生には、非常に複雑な社会経済文化のあらゆる分野に原因があり、具体的な邪教犯罪案件と邪教犯罪を行なう人間に対しては、その客観的危害と主観的悪質性に大きな区別が存在し得るため、邪教犯罪案件を処理する際には、硬軟織り交ぜた刑事政策の要求に基づき、異なる案件及び異なる犯罪分子に対しては区別対応を行なう。従い、『2017年解釈』第8条及び第9条の規定は十分に硬軟織り交ぜた刑事政策の精神を体現している。 

(一)重大危害に厳罰で臨む7つの状況 

2017年解釈』第8条は邪教犯罪の7つの厳重処罰状況を規定している。この規定に基づき、邪教犯罪を実行し7つの状況にある場合、厳重に処罰するべきである。具体的には(1)外国の機構、組織、人間と結託し、邪教犯罪を行なった場合、(2)省、自治区、直轄市に跨って邪教組織機構を設立し、メンバーを増やした或いは邪教活動を行なった場合、(3)重要な公共場所、管理地域において或いは重要な祝日、重要な活動期間中に騒ぎ、公開して邪教活動を行なった場合、(4)邪教組織の取締後、或いは邪教組織と認定された後、依然として騒ぎを起こし、公開して邪教活動を行なった場合、(5)国家の工作人員が邪教活動を行なった場合、(6)未成年者に邪教を宣伝した場合、(7)学校或いはその他の教育訓練機構で邪教を宣伝した場合。この7つの状況は、犯罪手段や方法が特殊であり、例えば国外機構、組織、人員との結託等、また犯罪地点や時間が特殊であり、例えば重要な公共場所或いは国家の祝日に行なう等、また犯罪主体が特殊であり、例えば国家の工作人員の邪教活動等、また犯罪対象が特殊であり、例えば未成年者に対する邪教宣伝等、こうした特殊性を具え、社会への危害が一般の邪教犯罪より重大な場合、司法解釈は厳重処罰を規定している。この規定は、厳格な政策精神を体現している。 

(二)3種類の状況を区別して寛大に処罰する 

2017年解釈』第9条は寛大処罰の状況を規定している。特定の邪教犯罪者に対しては寛大な処罰を行なっても良い。具体的には3種類、(1)邪教犯罪が“状況軽度”であり、行為者が本心から改悟し、明確に邪教組織から退出して再び邪教活動を行なわないと表明した場合、不起訴或いは刑事処罰を免除しても良い。その内、行為者が騙され脅迫されて邪教組織に参加した場合は犯罪処理を行なわなくても良い。(2)邪教犯罪を行なったが司法解釈第2条で規定した一般状況に該当し、行為者が一審判決前に本心から改悟し、明確に邪教組織から退出して再び邪教活動を行なわないと表明した場合、“状況軽度”と認定しても良い。(3)邪教犯罪を行ない司法解釈第3条で規定した“特に重大な状況”に該当するが、行為者が一審判決前に本心から改悟し、明確に邪教組織から退出して再び邪教活動を行なわないと表明した場合、“特に重大な状況”と認定せず、一般状況の法定刑を適用し、3年以上7年以下の有期徒刑及び罰金に処しても良い。この規定は、寛大な政策精神を体現している。 

2017年解釈』第9条の寛大処罰の規定は、事実上邪教犯罪からの退出の仕組みを確立していて、本心から改悟し、明確に邪教組織から退出して再び邪教活動を行なわないと表明した犯罪分子に対しては寛大な処罰を行なう。退出の仕組みについては、国外の組織犯罪規定にも広く存在し、我が国の『反スパイ法』等の法律にもこうした規定がある。組織犯罪等の特定犯罪に対して退出の仕組みを設立する事は、犯罪打撃の手間を減少し、犯罪懲罰の効果を増大させる効果がある。『2017年解釈』のこの規定は特定の犯罪分子に対しては寛大に処置するという精神を十分に体現していて、邪教組織の分裂瓦解に有効であり、邪教犯罪分子を感化激励する事は、邪教犯罪を処罰して社会の平穏を維持するだけでなく、犯罪分子の救助に対しても重要な積極的意義がある。注意すべきは、司法解釈は寛大な処罰を規定する際、犯罪分子に本心から改悟し、明確に邪教組織から退出して再び邪教活動を行なわないと要求するが、具体的な処理には状況を区別し、“状況軽度”、“状況特別重大”及び一般状況の犯罪分子に対しては、寛大処理の結果が異なり“状況軽度”の犯罪分子に対しては不起訴或いは刑事処罰免除更には犯罪処理としないが、“状況特別重大”及び一般状況の犯罪分子に対してはやはり刑事責任を追及し、前者の寛大処罰の幅は明らかに後者より大きい。この事は、寛大処罰を決定する際、主観的な悪質性を考えるだけでなく、客観的な危害も考え“状況特別重大”及び一般状況の邪教犯罪は、その客観的危害は“状況軽度”よりも更に大きく、寛大で良くても寛大の幅は厳しく制限され、これは実事求是の科学的態度を体現し、硬軟織り交ぜの刑事政策の区別対応の政策精神に符合する。 

五.邪教犯罪の停止形態の認定と適用規則の確立 

犯罪の停止形態は故意による犯罪の進行過程で、主観的な原因で停止した状態を指す。我が国の刑法では、犯罪の停止形態は2種類を含み、各々犯罪の完成形態と未完成形態である。犯罪の完成形態は犯罪の既遂形態とも言い、犯罪の未完成形態は具体的に犯罪準備、犯罪未遂及び犯罪中止の3つの状況を含む。『刑法』第300条第1項の規定、組織的に民間信仰を利用し、邪教組織が迷信を利用して法律実施を破壊する罪は行為犯に属し、行為者が法定の行為を行なったのみでもこの罪を構成し犯罪を既遂するが、これは未完成形態を意味するのではなく、行為の進行過程において犯罪未遂、中止、準備等の未完成形態が存在するのである[5]。邪教宣伝品を散布する前或いは散布途中に現場で押収された状況はどのように処理するか?2002年“両高”が公布した『組織的な邪教犯罪への法律応用の若干の問題に関する解答』第6条で関連する規定が作られた。『2017年解釈』は従来規定との整合性を基礎として、第5条で邪教犯罪の停止形態と認定適用規則を確立した。散布のための保有、携帯、或いは散布過程で現場押収され、邪教宣伝品の数量が『2017年解釈』第2条から第4条規定の基準に達した場合、分別処理となり: 

1.邪教宣伝品を行為者が制作した場合、犯罪既遂として処理する。 

2.邪教宣伝品を行為者が制作せず、散布していない場合、犯罪準備として処理する。 

3.邪教宣伝品を行為者が制作せず、散布中に押収された場合、犯罪未遂として処理する。 

4.邪教宣伝品を行為者が制作せず、一部を既に散布した場合、犯罪既遂として処理し、散布していない部分は、量刑時に酌量考慮する。 

上記の規定から判る通り、解釈の規定は邪教宣伝品の制作、散布状況に対してである。『2017年解釈』第2条の規定では邪教宣伝品の制作、散布は邪教犯罪活動の具体的な表現形式である。停止形態を具体的に認定する場合、先ず邪教宣伝品が行為者により制作されたか否かを区分する。第一の状況で、もし行為者が制作した場合、行為者が制作、散布のため保有、携帯或いは散布中に押収された場合、全て一律に犯罪既遂となる。第二の状況で、もし邪教宣伝品が行為者の制作でなければ、具体的に3つの状況に区分して判断する。(1)未だ散布していなければ、犯罪準備と認定する。(2)散布の途中で押収された場合、犯罪未遂と認定する。(3)一部を既に散布してしまった場合、犯罪既遂と認定するが、未だ散布していない部分は量刑時酌量考慮する。この規定は行為者が実際に散布行為を行なったか否か及び邪教宣伝品が既に散布されてしまったか否かを考えるのである。第二の状況で邪教宣伝品が行為者の制作ではなく、ただそれを携帯、保持或いは現場で押収しただけでは犯罪既遂とはならず、行為者の主観では邪教宣伝品を散布するためではあるが、その犯罪形態を判断する場合は散布行為が行なわれたか及び散布されたかが基準となり、散布していれば犯罪既遂であり、散布行為を行なっても散布されていなければ犯罪未遂であり、散布行為もしていなければ犯罪準備である。当然、散布過程で、多分一部の宣伝品は既に散布されたが一部は未だ散布されていない状況もあるであろう。こうした状況に対しては、行為者の散布行為は一つの総体であり、刑法が規制するのは類型化した邪教宣伝品散布行為であり、一つの宣伝或いは一部の邪教宣伝品の行為を規制するものではなく、一部の邪教宣伝品が未だ散布されていなくても散布行為の既遂には影響せず、従って『2017年解釈』はこうした状況を犯罪既遂として処理し、ただ散布されていない部分は量刑時酌量考慮するのみである、と明確に規定している。 

言っておくべき事は、『2017年解釈』は規定に符合した邪教犯罪は犯罪準備として処理すると明確に規定しており、これは邪教犯罪を厳しく懲罰するという政策精神を体現している。我が国の『刑法』第22条は犯罪準備を規定し、原則として刑法分則の全ての直接的故意の犯罪は道具を準備し、犯罪条件を製造する過程で確保されても関連犯罪の準備形態として処罰される。しかし立法では全ての犯罪準備を処罰する規定と原則異なり、実践中に犯罪準備として罪状処罰する案件は多くなく、ある学者は、“刑法第22条は既に有名無実であり、無意味な重複規定となっており、刑法修正時に削除を提案する”[6]としている。しかし、社会の急激な変化に伴い、犯罪の発展は絶えず更新グレードアップしており、立法上犯罪準備行為の処罰は多くの国々の立法選択になっており、刑事処罰前倒しの特長が表われている。例えば、日本の刑事立法では未遂犯、危険犯、予備罪の処罰規定が増加し、イタリア刑法もテロリズム或いは転覆を目的とする犯罪の予備行為を処罰しており、我が国の『刑法修正案(九)』もテロ活動の実行準備という犯罪予備行為を独立した犯罪として明確に処罰していて、特定犯罪の処罰時期を繰り上げて厳しく懲罰するという政策精神[7]を体現している。我が国刑法で規定した邪教犯罪は、組織犯罪の具体的な類型であり、宗教を詐称し、邪説を宣伝する等の形式で包まれ飾られ、強い扇動性、迷惑性があって普通の大衆は簡単に騙されてしまい、邪教犯罪が一旦実施されれば社会秩序と公民の合法的権益を深刻に侵犯し、重大な社会危険を持っている。この犯罪行為を厳しく懲罰する事は、我が国の刑事立法及び刑事司法の基本政策の方向である。従い、仮に犯罪準備形態であっても、同様に重大な社会危険性があるため、法に基づき認定と処罰を行なうべきである。 

六.邪教犯罪及びその他の犯罪の罪数適用基準を明確にする 

邪教犯罪の罪数適用基準は、1997年『刑法』第300条第3項にて規定し、組織的に民間信仰や邪教組織を利用し、或いは迷信を利用して婦女を姦淫し、財物を詐取し場合、それぞれ強姦罪及び詐欺罪で処理され、罪数で罰する事はなかった。『刑法修正案(九)』では邪教犯罪を厳しく懲罰するため、この規定を修正し、組織的に民間信仰や邪教組織を利用し、或いは迷信を利用した法律破壊実施罪には婦女姦淫、財物詐取等の犯罪行為も罪数で罰する規定で処罰すると明確になった。しかし、行為者は邪教犯罪を実施する過程で、往々にしてその他の犯罪も犯す。これに対し、『2017年解釈』は刑法の最新修正と従来の司法解釈或いは司法文書を結合させる事を基礎として、その第10条、第11条、第12条で各々相応する規定を作り、以下の3つの状況を含む。 

(一)組織が、邪教組織を利用して国家の法律や行政法規の実施を破壊する過程で、国家を扇動分裂させ、国家政権を扇動転覆させ、或いは他人を侮辱、誹謗する等の犯罪行為は、罪数に応じて罪状を決定し処罰する。1999年の邪教犯罪司法解釈では、邪教犯罪を実施する過程で国家を害する犯罪行為を行なった場合、国家安全危害の犯罪で量刑処罰される。『2017年解釈』は『刑法修正案(九)』の最新修正に基づき、修正と完全化を行ない、邪教犯罪の実施と同時に国家安全危害の犯罪を実施する状況を規定したのみでなく、侮辱、誹謗等人身の権利を侵犯した状況を追加し、組織が、邪教組織を利用して国家の法律や行政法規の実施を破壊する過程で、国家を扇動分裂させ、国家政権を扇動転覆させ、或いは他人を侮辱、誹謗する等の犯罪行為は、罪数に応じて罪状を決定し処罰する。 

(二)組織が、邪教組織を利用して、迷信邪説を制作、散布し、組織、策動、扇動、脅迫、教唆、そのメンバー或いは他人の自殺、自傷幇助を行った場合、故意殺人罪或いは故意傷害罪で処罰する。1999年の邪教犯罪司法解釈の第4条及び2001年邪教犯罪司法解釈第9条では脅迫、組織、策動、扇動、教唆、他人の自殺自傷幇助の行為を規定した。『2017年解釈』は従来規定との整合性を基礎として、組織が、邪教組織を利用して、迷信邪説を制作、散布し、組織、策動、扇動、脅迫、教唆、そのメンバー或いは他人の自殺、自傷幇助を行った場合、故意殺人罪或いは故意傷害罪で処罰すると明確に規定した。 

この規定を理解し適用する場合、『刑法』第300条第2項の組織が、民間信仰や邪教組織を利用し、迷信を利用して人を重傷死亡させた罪とは区別する必要がある。組織が、民間信仰や邪教組織を利用し、迷信を利用して人を重傷死亡させた罪は、組織が、民間信仰や邪教組織或いは迷信を利用して他人を騙し、重傷や死亡させた行為を指す。司法解釈が規定した状況とこの罪は客観分野では共に他人を重傷或いは死亡させたと表現するが、両者には明白な区別が存在し、3つの状況である。(1)行為方法が異なる。組織が、民間信仰や邪教組織或いは迷信を利用して他人を騙し、重傷や死亡させた行為方法は行為者が民間信仰や邪教組織或いは迷信を利用して他人を騙すが、司法解釈が規定した状況は邪教組織を利用或いは迷信学説を制作、散布するだけでなく、組織、策動、扇動、脅迫、教唆、メンバー或いは他人の自殺自傷幇助を行なう行為を実施した場合である。(2)因果関係が異なる。組織が、民間信仰や邪教組織或いは迷信を利用して他人を騙し、重傷や死亡させた罪は、被害者の重傷、死亡を邪教犯罪の行為者が直接実行したのではなく、迷信学説の制作散布を通じて他人を騙して重傷死亡をさせたのであり、例えば迷信学説を通して他人に病気でも薬を飲まないと信用させて死亡させたのである。司法解釈の規定では、被害者の重傷死亡は邪教犯罪分子が直接実施した結果であり、それには組織、策動、扇動、脅迫、教唆、メンバー或いは他人の自殺自傷幇助も含まれる。(3)主観的罪過が異なる。組織が、民間信仰や邪教組織或いは迷信を利用して他人を騙し、重傷や死亡させた罪では、学者は主観的には故意によるのみだと主張[8]しているが、実際には行為者は一般状況において故意に迷信学説を散布して他人を騙すが、被害者の重傷死亡の結果に対して所持する主観罪過は過失である。しかし司法解釈の規定では、行為者が被害者の重傷死亡の結果に対して所持する主観罪過は故意であり、もしくは積極的に被害者の重傷死亡を追求する場合もあり、邪教を利用して他人に自殺をするよう脅迫し、直接故意も間接故意も含まれるのである。 

(三)邪教組織の人員が自裁、自爆或いはその他の危険な方法で公共安全を害した場合、放火罪、爆発罪、危険な方法で公共安全を害した罪で処罰される。この規定は2001年邪教犯罪司法解釈第10条規定の基本的内容を踏襲している。実践では、邪教組織の人員が欺瞞や蠱惑を受けて自裁自爆といった行為を実施すれば、これらの行為は公共安全を害し、完全に放火罪、爆発罪、危険な方法で公共安全を害した罪に該当し、相応する罪で処罰される。当然、邪教組織の人員による自裁自爆が公共安全を害せずその他の犯罪も構成しない場合、犯罪を以って自裁自爆行為の刑事責任を追求するべきではなく、『治安管理処罰法』その他の法規で法律責任を追及するべきである。 

注意すべきは、『2017年解釈』第11条、第12条は複数罪処罰の実行を規定していない。その原因は、『刑法』第300条第3項によれば、組織が、民間信仰や邪教組織を利用し、迷信を利用して法律を破壊した罪と同時に婦女姦淫、財物詐取の行為があった場合、複数罪処罰を実行し、その前提は行為者が組織的に民間信仰や邪教組織を利用し、迷信を利用して法律を破壊した罪の実施である。しかし『2017年解釈』第11条、第12条の状況は、他人の自殺自傷でも公共安全を害した行為でも、行為犯が組織し、邪教組織を利用して法律を破壊した罪の過程で発生したのではなく、刑法が規定した複数罪処罰には属さない。例えば、邪教組織人員の自裁行為そのものは直接組織、邪教組織を利用して法律を破壊した罪には認定されず、公共安全を害した事は、放火罪で処罰されるのみである。当然、刑法の規定によれば、もし行為が組織、邪教組織を利用して法律を破壊した罪を犯し、同時に故意の殺人、故意の傷害、放火、爆発等の犯罪行為がある場合は、複数罪処罰となる。 

七.邪教犯罪認定におけるその他の重要問題を明確にする 

上記の6点以外に、『2017年解釈』は邪教犯罪認定におけるその他の重要問題について規定した。 

(一)邪教犯罪での数量或いは金額計算規則を確立した 

邪教宣伝品を制作、散布し通信情報ネットワークを利用して邪教を宣伝する行為では、数量と金額が犯罪成立と刑事責任大小に影響する主な要因であり、正しい数量と金額の計算はこうした邪教犯罪の認定のポイントとなる。『2017年解釈』第6条では主に二つの面から規定した。 

1.邪教宣伝品の数量金額の累計計算規則 

何回も邪教宣伝品を制作、散布する或いは通信情報ネットワークを利用して邪教を宣伝する場合、未処理の数量金額は累計計算する。ここでは行為者の違法犯罪行為で未処理の状況、それも刑事処罰と行政処罰を含む。もし行為者の違法犯罪行為が既に処理されていれば、新しい犯罪行為において重複計算は出来ない。 

2.邪教宣伝品数量の比例換算規則 

邪教宣伝品を制作、散布する或いは通信情報ネットワークを利用して邪教を宣伝する場合、異なる種類と形式に渉り、司法解釈の規定に基づき異なる数量基準により比例換算後に累計計算を行なう。これは行為者が邪教宣伝品を制作、散布する場合多くの類型或いは多くの形式で邪教宣伝を行なうのに対応するためで、例えば行為者がスローガン、書籍、ビデオテープを作った場合である。この場合、各種類毎に数量を個別に計算すると、司法認定に困難をもたらし、1種類の物品だけでは認定基準に達しなくても総合的にその危険性は処罰を受けるのに達している状況があり、この問題を解決するため、司法解釈はこうした状況では比例計算を行なうと規定した。具体的に換算する場合、『2017年解釈』第2条、第3条、第4条の規定により行なう。例えば第2条第11項により、ビラ、絵画、写真、スローガン、新聞1,000部(枚)以上と書籍、刊行物250冊以上は並列に規定されているが、両者には相当性があり、前者の1,000部(枚)は後者の250冊に換算出来、前後両種類の物品比率は4:1であり、犯罪に関わる宣伝品が前者もあり後者もある場合、この比率で前者を後者に換算、或いは後者を前者に換算する。 

(二)邪教犯罪の共同犯罪の処理規則を明確にした 

2017年解釈』第13条では、他人が組織し、邪教組織を利用して犯罪を実施するのを明らかに知っていて、それに経費、場所、技術、道具、住居食事、送迎等の便宜を提供或いは幇助した場合、共犯として処罰すると明記されている。他人が犯罪を実施するのを知りながらそれに便宜を提供或いは幇助した場合、行為者とその人間は共同故意を形成しており、双方の間には共同の行為だけでなく、共同の故意があり、共同犯罪の刑事規定に符合する。当然、共同犯罪が成立するには3つの条件があり、一つは行為者が必ず法定刑事責任年齢に達していて、刑事責任能力を持っている事、二つは客観的にそれに便宜を提供或いは幇助した事、解釈が規定している経費、場所、技術等の提供、三つは行為者が主観的に他人が組織し、邪教組織を利用して犯罪を実施するのを明らかに知っていても、もし相手が邪教犯罪の実施に関わっている事を確実に知らず、合法な、正当な目的で便宜提供や幇助をした場合、共同犯罪は成立しない。もし行為者が邪教犯罪分子が犯罪を実施した後にこれを隠したり匿ったりした場合でも、共同犯罪は成立せず、単独の隠匿罪となる。 

(三)明確に政治権利の剥奪を適用する 

2017年解釈』第14条では、邪教組織を利用して法律破壊を実施した罪、邪教組織を利用して人に重傷死亡を負わせた罪、厳重に社会秩序を破壊した犯罪分子については、政治権利の剥奪を付加出来る。政治権利の剥奪は我が国刑法では付加刑であり、剥奪されるのは公民が参加する国家及び社会管理分野の権利、例えば被選挙権、言論、出版、集会、結社、デモ、自由の示威等の権利、国家機関で職務を担当する権利及び国営会社、企業、事業単位と人民団体の指導職務の権利である。邪教犯罪は重大な社会危険性を持っていて、社会秩序を深刻に破壊する犯罪分子に政治権利の剥奪を適用する事は、これら犯罪に対する懲罰の程度を大きくし、社会秩序を更に良く維持する。 

(四)邪教宣伝品の認定順序を規定した 

2017年解釈』第15条では、邪教宣伝品の認定順序を規定しており、案件に関わる物品が邪教宣伝品に属するか確定が困難な場合、地方都市級以上の公安機関に認定意見の提出を委託出来る。人民法院及び人民検察院が邪教犯罪案件を処理する場合、案件関連物品はその内容に基づいて邪教宣伝品か否かを確定出来る。但し邪教犯罪が複雑で、犯罪分子が懲罰から逃れるため、邪教宣伝品を制作、散布する時種々の方法でその邪教宣伝品の違法事実を隠す、例えば邪教宣伝品を宗教作品のように装うと、司法認定に大きな困難をもたらす。この問題を解決するため、地方都市級以上の公安機関に認定意見の提出を委託出来、その委託主体は人民法院或いは人民検察院及びその他の邪教犯罪処理機関であり、委託の対象は即ち邪教宣伝品の認定主体は地方都市級以上の公安機関である。 

八.結論 

刑法は犯罪を懲罰し、人民を保護し、秩序を維持し、安全を保障する一振りの剣であり、邪教組織を取締り、邪教犯罪を厳しく懲罰する事は我が国の一貫した立場であり、司法解釈という形式を通して邪教犯罪の認定と処理中の疑問難問に明確な規定を出し、司法実践中の疑問難問を解決し、刑法の正しい適用を保証し、司法の公正な権威を維持する。『2017年解釈』は刑法の最新の修正に基づき、邪教犯罪発展の新しい趨勢を正しく反映し、系統的に従来の司法解釈或いは司法文書の規定と十分な整理と整合性を持ち、邪教犯罪に対する法律適用中の重要問題に対して明確な規定を行ない、司法機関に明確な法定根拠を提供し、必ず邪教犯罪の懲罰活動において積極的な促進作用を発揮する。具体的な法律適用過程では、厳しく刑法の規定に基づき、司法解釈の内容を正しく把握し、案件の実際状況と合わせて、犯罪認定と法律適用を正しく行なう。 

【参考文献】 

[1]胡江:『邪教犯罪を厳しく懲罰する刑事法の網』、凱風ネット 

  http://www.kaiwind.com/anticult/xingao/zqtj/201509/06/t20150906_2801113.shtml2015-09-06. 

[2]呉明高:『邪教の違法犯罪活動の趨勢及び処置対策』、『政法学刊』2013年第2期、第8183ページ 

[3]高銘、馬克昌主編:『刑法学』(第7版)、北京大学出版者、高等教育出版社2016年版、第149ページ 

[4]陳興良:『規範に向かう刑法学』、法律出版社2008年版、第355ページ 

[5]王作富主編:『刑法分則実務研究』(中)、中国方正出版社2007年版、第1,326ページ 

[6]楊書文:『我が国の犯罪準備処罰原則再考』、『江蘇警官学院学報』2005年第1期、第63ページ 

[7]胡江:『テロ準備実施活動罪』、『北京警察学院学報』2016年第5期、第12ページ 

[8]殿美:『邪教組織を組織し利用した犯罪に関する若干の問題』、『山東大学学報(哲学社会科学版)』2000年第2期、第118ページ 作者は西南政法大学法学院副教授、修士指導師、法学博士 

 

  

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