【北京=白石徹】中国共産党の中央弁公庁(事務局)と公安省は今月に入ってカルト教団に認定した団体の名称を公表し、市民が勧誘されないよう注意を呼び掛けている。科学者らで組織する「反邪教(カルト)協会」も初めて詳細な教団名簿を作成し、二十団体をカルト教団に指定。ウイグルやチベットで続く宗教紛争で少数民族と激しく対立する習近平政権は、全国にまん延するカルト教信者との対決も迫られている。
党指導部が最も危険視するのはキリスト教系の「全能神」と呼ばれる新興組織だ。「共産党政権を打倒して新国家を樹立する」と公言し、入信者には「激励金」をばらまいて急速に勢力を拡大。組織の指導者から末端まで厳格に統制され、既に百万人以上の信者を抱えている。
中国でカルト教団とされる組織は、急速な経済成長から取り残された高齢者や農民、農民工(出稼ぎ労働者)らに支持される場合が多い。中国社会はこの二十年の経済成長の裏で、所得格差の拡大、土地の強制収用、不公平な医療?保険制度や就業機会などの矛盾が噴出。その受け皿として「弱者救済」を掲げる宗教組織への入信が相次いでいる。
党中央弁公庁などがカルト教団として公表したのは「全能神」「法輪功」「門徒会」「徒弟会」「血水聖霊」「全範囲教会」「統一教会」など。一九九〇年代に入って創立された新興団体が多く、教祖らは米国などに逃亡して海外から活動資金を支援するケースが目立つ。
今回始まった全国一斉の取り締まりは、全能神の信者六人が先月二十八日、山東省招遠市のファストフード店内で、勧誘を断った女性客を「悪魔」と呼んで殴殺したことがきっかけ。
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