片方の親の都合でカルト団体に引き込まれた未成年者の子供。その子供について、もう片方の親からの監護者の指定と引き渡しを求めた今回の申し立て事件。裁判所が下した審判は今後も発生し得る同様の案件に関して重要な判例となりそうだ。
統一教会(家庭連合)分派団体に未成年の娘を引き入れた妻に対し、別居中の夫が娘の監護者指定と引き渡しを求めていた審判で、福岡家庭裁判所八女支部は、監護者を父親と定め娘を引き渡すよう命じた。
この夫婦の間には三姉妹と一男の計4人の子供がおり、十数年前に統一教会分派団体「21世紀友の会」に入信した母親は、平成22年頃から当時小学6年生だった三女を含む子供全員を同会の集会に参加させていた。集会に於いて母子は同会の“中間的リーダー”である女性Kから暴言を浴びせられるだけでなく叩く蹴るといった暴行を度々受けていた。Kから頭と首を拳で殴られ頬を平手打ちされる母親。二女が暴言に抗議すると逆上したKは母親の髪を引っ張りながら「謝れ!」と怒鳴り何度も机の角に頭を打ち付けたという。Kに“盲従”する母親からも虐待された二女は家出。長男もKから搾取され平手打ちや股間蹴り上げといった暴力を受け脱走している。
一方、長女と今回の案件となった未成年者である三女は2年前から母親と共に賃貸マンションに移り住み、行動を共にしている。当初は3LDKのマンションを借りていたが、今年に入り1Kの部屋に転居している。
友の会の集会に参加する他、Kの自宅でKの子供の世話をさせられている三女には情緒不安定の傾向がみられ、自分の家族に対するKの暴力を軽く見たり「仕方のないこと」と容認する供述をしていた。
カルト団体内で培われた濃密な母子関係と希薄な父子関係が争われた今回の案件。三女は父子関係の希薄さから父親による監護を拒絶し、母親による監護を希望していた。しかし福岡家裁は、Kによる暴力行為を「社会的相当性がなく到底許されるものではない」と団体内での暴力を認定した上で「未成年者の価値観の変容は社会的な許容限度を超える程度にまで至っており、未成年者の福祉を害する監護環境は看過できない程度に至っている」として父親を三女の監護者として指定するのが相当と判断し申立人である父親に引き渡されるべきとした。
◆ 【21世紀友の会】
統一教会の分派である【21世紀友の会】は、統一教会福岡教区の大牟田教会長だった田端利光が、2000年頃に統一教会の信者ら約30名を集めて作った宗教団体だ。その内部では、信者を規則づくめの共同生活に封じ込め罰金強要や「正し」と称する体罰がエスカレートしているとされ、信者を先祖因縁による精神的拘束下に置き、金銭搾取や暴力支配を続けていると云われている。
2010年、【21世紀友の会】の元信者数名は『損害賠償』『慰謝料』『借入金の債務不存在の確認』など合計約1400万円を請求する民事訴訟を起こしていた。その判決が言い渡されたのだ。福岡地裁は精神的損害額を50万円、経済的損害額を約225万円、弁護士費用を30万円と判断、合計約305万円を被告に支払うよう認定した。
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